凄まじいFラン専門学校で講師をしたお話
今村駿一
凄まじいFラン専門学校で恥ずかしかった話
「専門学校の講師をしてほしい」
こんな依頼が来た。
まぁ当時世話になっている人だったので軽い気持ちで引き受けた。
まさかこんな事になるとは思いもよらず。
初日。
教室に入るとどうやって入れたのかわからないがバイクがあった。
しかも2台。
ここ3階なんだけどな。
「教室でバイクの整備はやめなさいよ」
私が生徒にした最初の注意がそれだった。
因みにここはバイクの整備専門学校では無い。
「うるせ~んだよ」
カーン
黒板に空き缶を投げつけられた。
教室内を見渡す。
ヤンキー生徒15人。
真面目そうな生徒15人といったところだった。
しかし真面目そうな生徒もゲームでもやっているのか、夢中で手元を見ている。
「じゃあどこでバイクの整備をするんだよ!!」
少なくとも整備の専門学校では無い教室内でやる事ではないと思う。
「長谷川君コイツもやっちゃえよ」
「そうだよ、生意気そうだし」
女子達が煽る。
「よ~し、俺の柔道でしめるしかねーな」
長谷川君と呼ばれている金髪ガングロ少年が私に近づく。
「この前、オリンピックで金メダルとった○○知ってるだろ。俺はあいつに勝ったことあるからよぉ」
長谷川君はそう言って私に顔を近づけてきた。
「えっ、でもメダルとった○○君だったら君と体重あわないと思うけど。○○君の兄の方なら君と体重同じくらいだからわかるけど」
私がそう言うと長谷川君の動きが止まった。
「何だよコイツ柔道オタクかよ~」
ゲラゲラ笑う長谷川君と一緒に教室中のヤンキーが笑う。
「いや、彼とは試合した事あるから。僕の負けだけどね。兄はK先生、弟はR先生の所に今いるよね。君はいつ○○君に勝ったのかな? 君の名前は長谷川君? だっけ。今度君の事を聞いてみるから名前を教えてくれるかな」
私がそう言うと無言で背を向けて静かに着席した。
「どうしたんだよ」
「早くやっちゃえよ」
女子達が煽るが長谷川君は机にうつ伏せになって顔を上げなかった。
それを見たヤンキー達が全員静かになった。
「そろそろ授業をはじめますのでバイクは教室のわきによせて下さい。長谷川号とデカデカ書いてあるのは長谷川君のかな? 邪魔なので片付けて下さいね」
私がそう言うと素直に片づけてくれた。
もう一台のバイクもヤンキー達がすぐに片づけた。
「じゃあ授業をはじめます」
授業はとても静かに進んだが30分もしたあたりだっただろうか。
バリーン
どこからかガラスの割れる音がした。
「うおー」
「またはじまったぜ」
「よっしゃー」
生徒全員が教室の外に出た。
私も一緒に出てみると、
「コラテメー!!」
「うるせーやってやらぁ!!」
ヤンキー2人が取っ組み合っていた。
(何なんだここは)
呆れて何気なく横を見たら掲示板に、
〖廊下で爆竹禁止〗
と、書かれていた。
凄い所に来ちゃったなぁ。
数か月後。
まさかのいじめが発生した。
専門学校でいじめ。
聞いた事が無い。
全国初ではないだろうか。
加害者の生徒は退学になった。
再発防止の為、当該クラスで先生達が説教をする事になった。
特にヤンキーが多いクラスだったので先生何人かで行く事になり、なぜか私も一緒に行く事になってしまった。
1人目の先生も2人目の先生もかなりキツイ口調で説教をしてさすがのヤンキー達も静かに聞いていた。
教室の空気がかなり重くなってしまったので私は少し緩く話そうと思った。
「いじめられた山田君はね、ここの専門学校では珍しくとうかいだいすもう高校の様な優秀な学校を出ていてね」
教室内の全員が? という顔をした。
「お前らの中にとうかいだいすもう高校位凄い高校出た奴いないだろ? いるのか? 俺ですらとうかいだいすもうみたいな偏差値高い高校出ていないぞ」
クスクス笑いだした奴がいた。
人が真面目に話しているのに。
頭にきた私は怒鳴った。
「何笑ってんだ!! じゃあお前はとうかいだいすもう高校より優秀な学校を出たとでもいうのか!!」
そして私が教卓をひっくり返した所で1人目の先生が私に向かって小声で言った。
「とうかいだいさがみ、です先生」
教室中が爆笑となった。
その日から私のあだ名はとうかいだいすもうになり、職員室でも相模先生と呼ばれるようになりましたとさ(泣)
凄まじいFラン専門学校で講師をしたお話 今村駿一 @imamuraexpress8076j
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