睡眠バンク

第一話

　――睡眠時間を節約して、お金を稼ごう！　

　最近よく見かけるようになった広告。友達もやってるって言ってたから、興味を持った。

『睡眠バンクへようこそ。我々はみなさまの睡眠をお預かりする際時間に応じた金銭を利息としてお渡ししております。貯まった睡眠はいつでもお好きな時に引き出せます。集められた睡眠は企業に買い取られ、安眠ビジネスに活用されます。安眠ビジネスは富裕層がターゲットであるため、睡眠が高く売れます。その利益で、みなさまに金銭が提供できるという仕組みです。睡眠を預ける方は大勢いらっしゃいますので、お引き出しの睡眠が不足することもございません。安心してご利用ください』

　窓口担当のロボットの売り文句が、すごく魅力的な言葉に思えた。

　人工知能が高度な仕事を担う今私みたいになんの才能もないニンゲンは、昼夜を問わず物理作業に追われている。どこも安月給で長時間労働のブラックな職場。趣味活動もままならない。ストレス解消に役立つかもって、その場で契約した。趣味に費やす時間とお金を同時にゲットできて、一石二鳥だなって。

　結果、どうなったと思う？

　ちょっとならいいかって始めたのに、いつの間にか、止まらなくなっちゃった。

　睡眠バンクの睡眠貯蓄が減らない秘密がわかった気がする。みんなに、今すぐに睡眠を引き出しなさいって伝えたい。私みたいになる前に、手を引きなさいって。

　……まぁ、幽霊になった私の声なんて、誰にも聞こえないんだけどね。