第4話

「……、ここが僕の執務室だよ。さぁ、入って」

シュヴァルツヴァルト様がこちらに手を向ける。命令を確認。実行可能。よって、実行します。

「あぁ、そういえば.....自己紹介、してなかったよね?僕はシリウス・シュヴァルツヴァルト。一応この国、フリォーティカの軍人なんだ。国軍総司令部軍用危険物及び特殊兵器管理局局長ってことになってる。階級は確か.....准将だったような気がする。まあ、よろしく」

シュヴァルツヴァルト様は私の方向に右手を向ける。理解不能。

「リゲル、右手をこっちに向けて」

シュヴァルツヴァルト様からの命令を確認。実行可能。よって実行します。

シュヴァルツヴァルト様が私の右手に接触する。理解不能。

「はい、握手っと」

シュヴァルツヴァルト様の口角に上向きの運動を確認。理解不能。

「ヒトってね、初めて会ったときにこうやって互いに互いの右手を握るの。これを“握手”って言うんだよ」

“握手”、“ヒトが初めて会ったときにする行為”。理解した。

「君の名前と年齢は?」

理解不能。

「申し訳ありません。理解不能です」

シュヴァルツヴァルト様の左手が頭部に接触する。シュヴァルツヴァルト様が無作為に手を動かす。

「.....そっか、ごめんね。命令、ちょっと分かりずらかったよね。あっ、そうだ!リゲル、君の名前と生まれてからの年数を教えて欲しい」

シュヴァルツヴァルト様の頚部より左方向に微細に傾く運動を確認。理解不能。

「申し訳ありません。理解不能です」

シュヴァルツヴァルト様の左手が頭部に接触する。シュヴァルツヴァルト様が無造作に手を動かす。

「ぅえ〜……なんって言ったらいいのかなぁ……。最近此処に来たばっかで機械子女の扱い方全ッ然解んないんだよな……。もいきなりこんな面倒ゴト押し付けて部屋に篭っちゃったしぃ」

シュヴァルツヴァルト様の頚部より円を描く弛緩した運動を確認。

「えっと……、貴女は機械子女ですか?」

情報より “貴女”は“二人称”であり“話し相手を示す代名詞”、“機械子女”は“私のこと”、“か”は“疑問形を示す終助詞”。理解した。

「はい」


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万星、天は輝く 皇 神樂 @Sumeragi_kagura

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