第4話 過去

 これは永瀬の小学生時代に遡る。永瀬陽太、クラスの中心人物。小学四年生の前期は中学校でいう生徒会、児童会の役員に当選。頭の良さは学年トップレベルと崇められていた。「ながちゃん!」休み時間になるとそう呼ぶ声が飛び交った。ところが、永瀬はこの頃が黄金期、ここから落ちこぼれていくことになる。


 小学五年生、永瀬は一度宿題をサボることを覚えた。その後それが癖になり、家のドリルもサボるようになった。永瀬は一気に学校の勉強に追いつけなくなった。ゲームにハマり、ゲームばかりをやり、放課後を過ごした。テストの点はみるみるうちに下がった。赤点ばかりだ。でも永瀬はその自分を認めず、周りに見栄を張った。見栄を張ったがゆえに、永瀬は自分を苦しめることになった。クラスには居づらくなった。


小学六年生、永瀬はついに児童会役員からも落選した。仕方なく、永瀬は前期放送委員会に入り、放送委員長となった。自分の肩書きが無くなるのが嫌だった。だが同じタイミング、声変わりで声が出なくなった。うまく声が出ない永瀬は周りを無視し始めた。放送委員長なのに放送ができず、ペアとなった一個下の女子の後輩に迷惑をかけたことから、自分へのストレス、プレッシャーがたまっていった。


小学六年生の後期、もう誰からも話しかけられなくなった永瀬は自分の求心力の無さは自覚していた。委員会決め、園芸委員会は人気がないことはみんな知っている。じゃんけんに負けた人が入ってゆくイメージだ。永瀬はあえて園芸委員会に入った。永瀬は絶対に肩書きを失いたくなかった。何者でもなくなるのが怖かったからだ。園芸委員会には案の定、やりたがって入った人は少なかった。園芸委員長に無投票で永瀬が選ばれた。


 もう小学校でのような思いをしたくない、何者かでありたい。そんな思いで永瀬は中学校に入学したのだ。中学校デビュー、明るく堂々といこうと考えていたのだ。そんな永瀬がこれから自分の黄金期、小学四年生時代を越えることは本人も予想していなかった。永瀬がどう変わっていくのかにご期待を。

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座る理由ができたから ぽんずとれもん @PONZUtoLEMON

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