戦争と永久の存在
藤泉都理
戦争と永久の存在
背中に気を付けろよ。
俺たちは幾度この言葉を投げかければいいのだろうか。
俺たちはいつ、この言葉を投げかけなくてもよくなるのだろうか。
訓練や学習によって培われた高度な能力であるスキルの持ち主のデータを蓄積、訓練や学習を重ねる事、二百年。
戦争を起こそうと考えている者を察知できるスキルがある、
戦争を起こそうと考えている者を察知できる者を察知するスキルがある、
二人のクローン人間が完成した。
戦争に反対する非公認組織によって創られた綾杉は、戦争を起こそうと考えている者を捕獲、及び波川を殺害するように命じられ、戦争に賛成する公認組織によって創られた波川は綾杉を殺害するように命じられた。
綾杉も波川もクローン人間である。
何度殺害されようが、すぐに創造、学習、特訓され、また命に従うのみ。
殺害して、殺害されて。
終わりなき輪廻。
果てなき殺害。
二人のクローン人間の死体はもはや、地球を覆い隠すほどに甚大な数に達してしまった。
それでもなお、誰も気に留めない。
クローン人間であるが故に。
クローン人間に、死は訪れないと、考えているが故に。
背中に気を付けろよ。
綾杉は波川に言った。
波川は綾杉に言った。
皮肉なものである。
互いに殺し合う運命にある綾杉と波川だけが、互いの命を重んじているなど。
戦争さえなければ。
俺たちは生まれなかったのか。
戦争があったから。
俺たちは生まれてしまったのか。
戦争は。
綾杉と波川は常に考えていた。
戦争があるからこそ、生きて、死んで、存在していく。
他者にとっては、恐怖を抱かない、命を軽んじる生物として。
綾杉と波川にとっては、恐怖を抱く、命を重んじる生物として、存在していく。
いつ殺すか、
いつ殺されるか、
この恐怖と。
二人だけしか知らないのだ。
命を重んじる生物として。
永久に存在し続けていく。
(2024.3.29)
戦争と永久の存在 藤泉都理 @fujitori
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