エピローグ

 その日、1人の子どもが生まれ、その子は「詩奈」と名付けられた。その子は順調に成長し、今日は高校の入学式である。


 彼女は重い荷物を家族に任せ、自身は新しい通学路に慣れるため1人で帰っている。彼女は喉の渇きを覚え、最近入学祝いで買って貰った長財布を開けた。

 その瞬間、天からの意地悪かのように突風が吹いた。その突風は彼女の長財布の中身をさらった。

「ヤバ!」


 彼女は叫んだ。長財布には紙幣とは別に白い羽が1本入っているからである。その羽を彼女は母から譲られた。その羽を母はその祖母から受け継いだ、という。その羽は彼女の祖母の時代からその姿を留めているそうだ。彼女がその羽をもう少し知ろうと経緯を聞こうと思った時には既に祖母はボケていたため、それ以前の来歴を辿ることはできない。曰くその羽は魔除け兼良縁のお守りということらしい。といっても彼女自身はそれを信じてはいないが、確かに彼女の両親は夫婦円満で、別れる兆しは一切見られない。

 幸いその風は一瞬だったため羽の場所は捉えることができた。彼女はまた飛ばされぬように、と全速力でそこに向かった。


 ゴン! その音を聞いたと同時に彼女はバタリ、と倒れてしまった。羽のあった場所は横断道路に近く、そこからの通行人とぶつかってしまったのだ。

「す、すいません……大丈夫ですか?」

「私は何も。あなたこそ大丈夫ですか」

「多分……。それで、今白い羽を探してるんですけど、心当たりとかありますか?」

「あ、これ?」

 通行人は立ち上がり、後ろに落ちてあった羽を彼女に手渡した。

「それです、それです。ありがとうございます……って、〇〇高校の方ですか?」

「ああ、はい。……もしかしてどっちも新入生ですか?」

「そうなりますね。なら自己紹介でもしておきますか。私はD組の柏原詩奈です。よろしくお願いします」


 彼女の自己紹介を聞いた通行人は通学バッグを手で軽く払った後、

「私はE組の南芳人です。こちらこそよろしくお願いしますね」

 と名乗った。

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天使の赤い糸 かけふら @kakefura

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