第8話 5分前の真相
「それは……」
「年輪だとか、化石だとかそういうもので証明はできないのでしょうか?」
統括さんはそんな質問をした。
「確かに。しかし……例えば地球だ。地球は46億年前にできた。でもこれが5分前に私が創世し、その時に46億年前にできたという風に思わせる創世を行ったとしたら?」
「証明が、出来かねますね」
「そういうことだ。……これは人間が考え出した5分前仮説というもので、人間たちはこの問題に対しては『知ることはできないから議論するな』としている。まあそれでいいとは思うが。……で、373番。君は自分のことを1250歳だと思っているだろう。しかしそれが実は天使としては20年ちょっと前に創造され、1250年前に創造されたと思わせるように含め創造した、と言えば。君はそれを否定できるかい?」
私は頭が真っ白になった。最高神様は本当のことを言っているのだろうか? いや最高神様は絶対的に正しい存在だ。嘘をついているとは到底思えないし思うだけで不敬であろう。だから本当だとすれば、私は全世界から壮大なドッキリを仕掛けられていたのだ。ただ、それを頭に置けば全てに納得がいく。そうすれば47番を知っている、つまり関係が無いと脳が処理できるのだ。現実にはそう上手くはいかなかったが。
「それが373番と47番の因果だ。運命とも呼んでいいのかもしれないが。そして本題だが、君の処遇だ」
私は覚悟していた。ただせめて彼女を新たな責め苦を受けないように、と願っていた。
「373番、君は……この世界から最低20000年追放だ。そして47番……今は柏原詩奈、と呼ばれる人間だが、彼女は最短でも1000年の地獄行きだ。彼女に自覚があろうとなかろうと、遡れば彼女に大きな原因がある」
「そうですか」
私は酷く落胆した。けれども一介の天使ごときが最高神様に対抗できるわけが無く、私はその命を受け入れることとなった。この瞬間から私は罪人なのだ。そして彼女まで罪人にしてしまった、という後悔が残る。
「そして……だ。これ以上私が運命を操作しようとすればさらにこの世界が崩れるだろう。だからこの後のことはもう知らない。まあ自由にしてくれて構わん、ということだ」
その旨を伝えた最高神様は私と彼の前から姿を消し、私は彼の前で土下座した。
「申し訳ございません。私のせいで……あなたにもご迷惑を」
「いや、こちらこそ君、いやもう、ミナミと言おうか……守り切れず申し訳なかった。まあ、どこか生まれ変わったら一緒に酒でも飲もうじゃないか」
「ええ」
長居は無用ということで私と彼はその宮殿を出て行った。その敷地を出て行った頃、背中に変な感触を覚えた。何かがもぎ取られるような、そんな。
「ミナミ、何かあったのかい?」
「いや、何か変な感じが……」
「あ。翼、無くなってる」
それは私が既に罪人で、この神聖な場所から過ぎ去らねばならぬ、ということを示していた。
「今までお世話になりました」
「ま、良いんだ。それじゃあ行ってこい」
私は輪廻の渦に飛び込む。私と彼女はいつか自由な恋人として出会えるのだろうか。けれども運命が全てを導いてくれる、そう信じることにした。
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