第10話:サンドリヨン・ヴィレイネス

 怪しいステージから小悪魔のようなマスクを被り、彩り取りの衣装を着た少女達が舞踊り、現れた、そして、道を開ければ、一際目立つ三人の少女が現れた。

 左は金髪のツインテールに金色の猫目、黒豹の耳と尻尾、黒い角、華奢な胸を持ち、豹をモチーフにした黒いドット模様がある黄金のアイドル衣装を着ている、ぶりっ子な少女。

 右は蔦のような触手を生やした黄緑髪のロングヘアーと毒々しい紫の瞳、深緑の角、豊満な胸を持ち、ハエトリグサをモチーフにした緑のアイドル衣装を着て、ウツボカズラをモチーフにしたシルクハットを被った、不思議系少女

 そして、真ん中は赤髪のロングヘアーに金色の瞳、赤茶色の角、豊満な胸を持ち、ラフレシアをモチーフとした赤いドレスを着た、カリスマ性溢れる少女であった。

「正し過ぎて、退屈な世界に歪んだ変革を。」

「純粋過ぎて、眩しすぎる世界に闇の安寧を。」

「そう、我らは世界を堕とす魔の偶像…我らはサンドリヨン・ヴィレイネス!」

 三人娘が歌い出した瞬間、背中にサンドリヨン・ヴィレイネスのロゴが付いたピンクのパーカーを着て、ハート型のガスマスクと鉢巻きを身に付けた姿のファンたちがステージを囲む。

「レイシア様〜、迷える子羊である拙者らを導き下され!」

「クローネたん、可愛いよ! 世界一、否、宇宙一の可愛さだよ!」

「モナミちゃんのファッション奇抜過ぎる! そこに痺れる憧れる!」

 余りの熱狂ぶりとは裏腹に正義たちは呆然としていた。

悪雄ヴィランなのか、あいつら?」

「ああ、確か、サンドリヨン・ヴィレイネスっていう魔界から来た夢魔のアイドル結社らしい。スマホにも載ってあるぞ。」

 匠はスマホでインターネットに掲載されたサンドリヨン・ヴィレイネス公式ホームページを正義たちに見せた。

「悪党なのに、アイドルとは世も末だな。」

「あはは、レイシアさんは悪党かも知れないけど、優しい所も魅力的に映るから…余計に応援する人が多いから。」

「うわ、クローネの奴、また、写真変えたわね…あの腹黒目立ちたがり、私の響子を馬鹿女扱いするから苦手なのよ。」

「モナミちゃんは奇抜に見えて、根は真面目だから、話し易いし…」

「響子たちはよく知っているな、サンドリヨン・ヴィレイネスの事? もしかして、ファンなのか?」

 正義の指摘に響子たちは冷汗を掻いて、焦り出して、誤魔化した。

「いっ、いや、偶然、カルテットクローバーマジェスピュアとサンドリヨン・ヴィレイネスの闘いを下校時に目撃して…」

「そっ、そうよ、あのイカれた承認欲求主義者たちとは何の縁もないから!」

「ほら、テレビでもよく魔法少女を特集するでしょう。だから、別に知っていても、不思議じゃないから。」

 苦笑いを浮かべる響子たちに首を傾げる匠と正義だったが、周囲からの敵意に気付き、振り向けば、先ほどのファンや踊り子たちに囲まれた。

「レイシア様たちの歌を聞かないどころか、踊りさえも見ないとは失礼ではないですかい!」

「そーだ! そーだ! 特に水色髪の少女は随分、失礼な事を言ってくれたな!」

「どうしますか、処す? 処刑しますか? 処置しますか?」

 周りからの険悪な雰囲気に対し、正義と匠は身を挺して、響子たちを庇おうとした。

「済まないが、アイドルに関しては知識が無いからな。そんな初心者相手に憤らないでくれ。」

「いや、謝るように見せて、煽るなよ…とりあえず、どう撒くか、考えた方がいいんじゃねぇか?」

(どうしよう、このままじゃ変身できない。また、正義君を危険な目に…)

 その時、レイシアがステージから正義たちの下へ舞い降りて来た。

「ふふふ、中々、私の魅力が効かないなんて、中々、豪胆だわ。流石、民雄ヴィジランテね。」

「ゔぃ、ゔぃじらんて?」

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超雄社会の自警譚(パラベラム) @kandoukei

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