このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(211文字)
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(144文字)
主人公のコズエが操作するダイヤル式のレトロなラジオ。彼女にとって心の拠り所とも言えるこのデバイスが呼び起こす、様々に沸き起こる情念を綴った物語。言葉と感情のうねりが波のように読み手の心へと押し寄せ、情感豊かな筆致として胸に強く訴えかけてくる迫力を感じます。コズエと母親はお互い思いを伝えたくても、言葉が不器用すぎて、まるでもつれた感情の糸が絡まるように、もどかしくて、やるせない。それらを優しく解かしていくようなこもれび。目には見えない誰かに似て、温和で美しい言の葉がとても印象的な小説です。
決して軽いテーマでないですが、言葉選びが適切なのでしょうか、読みやすく、心にスッと入ってきます。