エピローグ 忘れられ師
「はっはっは。菩伴の奴め、ちゃんとうまくアイちゃんを見つけられただろうな」
ハンドルを握る住職のとなりでは、妻の
「早めに帰っていてよかったわねぇ。
「あの子が親に言えないようなこと、するとは思えん。彼氏かなんかだろう。はっは、菩伴はフラれるかな」
「そうなったら、ショックでまた不具合が起きるかもしれないわねぇ」
「うむ、まったく奇妙なことよ。わしの言いつけ通りに行動していた菩伴が、
以前の、自分はプログラムだと割り切っている言動に、菩伴という〝
だがそれが、あのアイちゃんと接するうちに変わってきおった。
「ハレンチ絵に興味を示すという前兆はあったけどねぇ」
「あれは原因不明だな。なにか悪いデータでも拾ってバグったのか、わからん」
「でも、あえて意地悪するのはちょっと大変だわ。もう、ロボットと思えないもの」
「廃棄処理をちらつかせたり、な。生への執着や、アイちゃんのことを隠そうとつく小さな嘘。それらのような人間らしい苦しみを与えてみたかった。それを知って、再び〝空〟の境地に達することができたのなら、本物だ。
悦明寺を任せられるかは、奴次第よ。わっはっは」
「うふふ、意地悪ねぇ」
「そういえば、風鶯くんと一緒にいたギャルっ子も、なかなかよかったな」
「ちょっと! そんなに若い子がいいの?」
「いやいや! 彼女、みちゅこちゃんの若い頃の雰囲気に似ていて。青春を思い出したんじゃよぉ」
「んもう。嫉妬させないで、英たんのバカ」
「わっはっは! よぉし、今日はこのまま、横浜までドライブデートといこうか!」
「うふふ、いいわね。連れてって」
こうして赤いスポーツカーは、桜舞う東京の街を突き抜けていくのであった。
AI坊主とギャルのご縁~煩悩によるエラーが生じました~ やなぎ まんてん @hishiike
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