第4話 スラー村
「なぁぁぁー」
フルートに連れられて今日泊まる家に着いてびっくりした。
「オルガンどうしたの?」
「なんですかこの素晴らしい家は!」
そこまで大きくはないが、家具やキッチン回りが完璧。しかも整理整頓せいりせいとんされた綺麗な一軒家いっけんや、まぁ2階はないけど良い!すごくいい!!
「……そういえば最近出来たんだけっけ?この家、気に入ったの?」
「気に入ったよ!いや最高じゃないですかこの家は!!今まで住んでいた町の家が霞かすむレベルだよ」
「ふーんそうなんだーへー」
フルートはそう言うとニヤニヤした。
「フルートさん?」
「なら僕の城はもーっと気に入るはずだよ!明日は僕の城にいこうね!えいっ」
そう言って抱きついてきた。
「うーんいい匂いだなぁ」
フルートはクンクンと俺の匂いを嗅ぎながらうっとりしていた。
「クンカクンカスーハスーハ?」
「いい匂いだなぁ~オルガンの匂いをずっと嗅いでいたいよースーハスーハ……えっ?」
顔を真っ赤にしながらあたふたし始めるフルート。
「違うの!いや違くないけど、違うの!」
言葉が迷子かなー?
「あぁーッ!!オルガン!君まで僕をおもちゃにするんだね!!」
「いやいや、おもちゃにはしてないよ。ただベースさんの言った事が本当かなぁ~と」
そう言うとフルートから禍々しいオーラが出始めた。やばそうな雰囲気だけど大丈夫か?
「コケにして、よくもコケにしやがって……魔王軍最強の僕をよくもぉぉぉ~」
ぴえん。マジやばい。牙剥き出しの、大きな爪まで出てるよ。
俺、死んだかも。そういえば、フルートに挑んで生き残った人は一人もいないんだった。
「……もしかして殺されちゃう?」
「こ、殺す!?そんな事するわけないよ!えーっと罰として魔王軍に入ってもらいます!!」
「いやいや、なんで罰なの?」
「僕に恥をかかせたから!もういいから魔王軍に入って!」
「保留で!!それよりご飯作るけど食べない?」
フルートの目が輝いた。
「オルガンのご飯大好きー!うん食べたい」
「オッケー……クワッ!?」
「クワッ?どうかしたの?」
「いや何でもないよ」
俺はキッチンに立って思わず目を見開いた。
使いやすいキッチン!
発酵の済んだパン生地と、野菜やキノコ、更には干し肉まで棚に用意されていた。
至れり尽くせりやないかーい!
さすが、ベースさん!やりますねー。
俺はあまりの楽しさに、鼻歌交じりで料理を始めた。
料理中、熱い視線を感じて振り向くと、フルートがにへーと幸せそうな顔をしていた。
「フルートさんどうしたの?」
「えへへッ、なんかいいなぁーと思って。これからの生活が楽しみだなぁ~って!だって毎日オルガンと一緒なんだよ!!幸せだよ」
フルートはしっぽをパタパタさせながら、上機嫌にこちらを見て幸せそうにしていた。
「そっか~毎日かぁ~……毎日!?どゆこと?」
思わず調理の手が止まった。
「これから毎日一緒だよ!僕はオルガンが大好きだし、オルガンも僕が大好き!両想いの2人は一緒にいるべきじゃない?もう離れられないね」
なんか重い。愛が重い!ヤンデレっぽい。
でも、恩があるから……うーん
オルガンは考えるのをやめた。
「……」
「うんうん!僕のダンジョンに住むことも決まったし、魔王軍の加入も決まったからずっと一緒だよ」
「ダンジョンに住むけど、魔王軍の加入は決めてないよ」
俺が爽やかに返すと、フルートは少し拗ねた表情をした。
「やっぱり魔王軍に入ろうよ~!オルガンが魔王軍に入ってくれないと、ずっと一緒にいれないよー!寂しいよー魔王軍の仕事で離れたくないよー嫌だよー」
いやいや今まで、毎日一緒じゃなかったですやん。
「まぁ~あれだスープとサラダ出来たから食べよう!パンは焼き始めたから待ってね」
「クンクン、いい匂いだなぁ!オルガンが作るご飯美味しいから好き……って話し聞いてた?」
「食べないの?出来立てだよ」
「食べるよ!……美味しい、幸せー」
ーーーーーー
「うーん!おいしかったよ~!」
夕飯を食べ終わったフルートは、幸せそうにまどろんでいた。
「あれ?なにしてるの?」
「お酒のつまみだよ」
俺はキッチンでお酒のつまみを作っていた。いやあれだろ、明らかに酒のつまみ用の食材を用意してあるよね?
「ふふーん。なるほど、僕を酔わせてどうするつもりなのかな?」
「うーん、介抱?」
「なんでよ!違うでしょ!!」
「ふっふっふ、俺がスラーの村に来て泊まる。何も起こらないはずがない」
「ど、どういう事?」
「感じる。宴会の匂いが!!キリッ」
「キリッ?えっ……と」
足音が聞こえて来た。時間的にそろそろだと思ったよ。
「ふっふっふ、来たぜ」
満面の笑みの3人組が入ってきた。
「おーいオルガン!酒持ってきたぞー」
「はーい!ベースさんいらっしゃいって酒樽ごと!?」
「えっ飲めるだろ?フルート様もいるし!」
「確かに!」
上機嫌のベースが大きな酒樽を担いで入ってきた。
「オルガン、お邪魔するよ~伝統的なお酒!はいっ」
「さすが、サッスクさん。人間達にはゴブリン酒と言われ重宝されているんですよ」
ちなみに、このゴブリン酒はSSランクのレアアイテム。ゴブリンを倒した時にごく稀にドロップする超レアアイテム。
まぁ~ここじゃ普通に飲めるケドね。
「ブヒッ!私はキノコ酒と干しキノコを持ってきたよー」
「おーオカリナの姉さんありがとう!」
オーク随一のキノコハンターのオカリナさんは、めちゃくちゃ上手いと評判のキノコ酒と、種類豊富な干しキノコかぁー。
「俺はこんな感じてつまみ……作りました」
「おおー」
「おおー」
「おおー」
「って待って待って!おおーじゃないよ。これから2人の時間でしょ?なんで!!」
「フルート様、今日は皆で飲みましょうよ!!せっかくみんな揃っているんだし」
「そうですよ!仲間もこれから続々来ますから!」
「ブヒッ、フルート様是非私の秘蔵のキノコ酒をささ、どうぞ」
「むー」
訴える様なジト目で見てきても困ります。
「まぁもらうけど……あっおいしい、もう!!やけ酒だぁー」
クランの仲間に保険金欲しさに毒を盛られ、ダンジョンに捨てられた話する?まぁ魔物と話せるから余裕ですが!! 黒トンボ @niziirotonbo
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