竜王ドラグラティア、王都アブ=ジャードに君臨す

オドマン★コマ / ルシエド

「竜王様に聞かせたい願い、ですか。それでは……私とお友達になりませんか?」

 ある時。

 魔法と奇跡が巡る異世界で、歴史ある王国で、王都の眼鏡屋の前に、極めて神聖で偉大なる存在が降り立った。

 その名は。


「ククク……我が名は竜王ドラグラティア! 智慧無き竜の合間に生まれ、智慧を持ちて産み落とされた者! 竜の支配者にして世界の支配者となるべく生まれた存在よ!」


 王家は「あのくらいの竜なら仕留めるのは難しく無いが知性持つ異種族とは仲良くした方がよい」と判断し、竜王と交渉する人間を選抜。全権を一任することとした。


 結果選抜されたのはベト家の令嬢にして王室直属研究室の主任研究員、アリスベットであった。眼鏡を掛けた才色兼備の金髪美女、深い知識と高いセンスを併せ持つ学術の徒である。

 アリスベットは早速、竜王との話し合い……という名の、実質的交渉に入った。


「竜王様。ゲームをしませんか」


「ほう! ゲームだと?」


「何か1つ、不可能だと思うことを指定してみてください。私ができなければ貴方様の勝ち。できれば私の勝ちです。負けた方が勝った方の言うことを1つ聞く、というのはどうでしょうか?」


「成程な、面白そうだ! ならば1つ! 『我を驚かせることは不可能である』! 我は今まで一度も驚いた事がない!」


「了承しました。竜王様を驚かせれば良いんですね?」


「不可能だろうがな! ふはははは!」


 アリスベットは探り入れを兼ねて、竜王に街を案内する。

 竜王は未知なる人の世界に心躍らせていたが、驚く顔は一度も見せなかった。


「やはり我を驚かすなど不可能だったか!」


「そうですね……」


 アリスベットは、そこで突然、眼鏡を取った。


「お前顔のそれ取れんの!?!?」


「あ、びっくりしましたね」


「あっやべっ」


「人より優れた生命は、劣化した身体機能を道具で補ったりしないんだろうなと思いました」


「え? お前顔の一部取っちゃって大丈夫? 痛くないのか? 舐めてやろうか?」


「ご心配いただきありがとうございます。大丈夫ですよ、竜王様」


 そういうことになった。

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