瓶底メガネの悠里さん

亜璃逢

瓶底メガネの悠里さん

 制服が可愛いからと入学する人もいる、敬愛大学附属高等学校。

 実は私も、その一人だったりする。


 合格発表の日、自分の受験番号があるのを見たとき、決めたことがあるんだ。

 というより、合格したら絶対そうしたいと親にもおねだりしてた。


 高校デビュー。

 やっぱり、可愛い制服に合わせて、それなりに可愛くなりたいし~。

 なによりこれまでの私からガラっとイメージを変えたい!

 そのためには!

 このメガネを卒業した~~~~い!!

 男子に「瓶底」ってつけたれたあだ名が私のトラウマなんだもの。


 幼稚舎から短大、大学もあるこの高校は、それだけ、人間関係が濃かったりするらしい。

 となると、最初が肝心だよね? ね?


 そんなで、母とやってきた眼科。


「曽根さ~ん、曽根悠里さ~~~ん」


 名前を呼ばれて診察室に入る。検査をして、度数が決まれば、コンタクトを入れる練習をする。

 お?おお?意外と難しい。

 ポトっと落としてしまったら、看護師さんが一言、


「はい、これは捨てますね~。新しいの入れましょうね」


 え、あ、そうか。衛生的にもよくないよな~と思いながら、再チャレンジ。

 なんとかクリアしたよ~。


 すっごいちっちゃい頃以来で鏡にうつる、メガネの無い私。こんにちは。



 何度かコンタクトで過ごす日を経て迎えた入学式の朝。

 一度ですっと入る日もあれば、やたら時間がかかってしまう日もあったけど、今日はうまくいった。なんだかそれだけで嬉しくなってしまうよね。




 入学式を終え、GWを迎える頃にはクラスの中でグループができてきて、私にもよくしゃべる友達もでき、ちょっとほっとした。 連休中に一緒に遊ぶ約束もしたしね。



 そんなある日、やってしまった。

 そう、コンタクトを片方とはいえ落っことしてしまった。しかも校庭で。

 教室に帰れば替えのコンタクトがあると思ったんだけど、その日に限ってポーチを家に忘れてきてる……嗚呼……


 目が悪すぎるから、片方だけでは頭がくらくらする……

 しばらく頑張ってみたけど、無理っぽい。


 あきらめて、メガネケースを取り出す。


「あれ?悠里ちゃん、メガネ?」

「あ、うん。コンタクトしてたんだけどさっき落としちゃってさ」

「コンタクトだったんだぁ」

「あ、あの、滅茶苦茶分厚いメガネだから……笑わないでね?」



 高校入学以来初めて友達の前でつけるメガネ……心臓に悪い一瞬。



「あ、かわいい~~~」


 え?


「ほんとだ、メガネっ娘悠里ちゃんいいじゃん!」


 え?


「そう思わない?鈴木君」


 ちょっと……


「うん、なんていうか、デキる女子! って感じがする」


 あれ?




 結局、私を色メガネで見ていたのは、私だったようだ。

 ぬぬ。トラウマを植え付けた男子、許すまじ!


 時々カピカピに乾いて泣きそうなこともあったコンタクト。

 これからは、たまにメガネっ娘悠里も登場させることにしようかな。


 と思った高校一年生の夏の初め。



 っていうか、私自身は、メガネ男子萌えなんだけどね。ふふ。

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瓶底メガネの悠里さん 亜璃逢 @erise

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