第12話 天才ナシル
努はタリアを助けたことでおもてなしをされそうになったけどその貧乏具合を見てさすがに気が引けた努は魔法の実験に付き合ってほしいとお願いした。
まずは病弱で布団で寝転がることが多いミラノに
「これを飲めば私の病気が治るんですか?」
「分からない。これがどれほどの効果があるのか。最近考えたばかりだから」
「・・・分かりました・・・それじゃあ飲みますね・・・」
ミラノは努の浮かべた
ゴクゴク
「・・・どう?ミラノ?・・・」
「・・・少しは良くなってるはずなんだが・・・」
なにげに努も初めての
「すごいよ・・・すごいよお兄さん!?なんだか身体が軽くなった気がする!?」
そう言って飛び起き飛び跳ねるミラノ。
「見てみてお姉ちゃん!私これだけ運動してるのに全然苦しくないよ!」
そのミラノの元気な様子を見たタリアは涙を流しながら喜ぶ。
「・・・ミラノ・・・」
そしてすぐにタリアは努の方を向いて土下座の姿勢。
「ミラノを助けていただきありがとうございます。努様」
その突然の様子に驚く努。
「感謝は伝わった。だからそれは止めてくれ。それに様付けも。俺はそんな偉い身分でもない」
「かしこまりました」
そう言うと土下座の姿勢を解除したタリア。それに安堵する努。
「ですが私の命を救っていただき、さらには妹のミラノの病気まで治していただきました。この御恩は一生をおかけしてお返しするしかありません」
「・・・いや・・・そんなこと言われてもな・・・」
その眼は真剣そのもの。努のためならば自身の身体であろうとも投げだしそうなその姿勢にやってしまった感が襲ってきた努。すると、そんな2人のやり取りを無視するかのように三女のナシルが努に詰め寄る。
「今の魔法はなんですか?私の知らない魔法です」
その近さに少し下がり答えようとする努。しかし努が下がった分を詰めるナシル。
「・・・あれは最近考えた魔法だ・・・」
「考えた?教わったのではなく?」
「あ、ああ・・・俺は誰にも魔法を教わってないよ・・・」
そう言うと努に詰め寄っていたナシルは努から離れて1人でぶつぶつと呟きだした。
「・・・独学であれほどの魔法を・・・誰にも教わらず?・・・無名過ぎる・・・」
考え出したナシルに変わってタリアと落ち着いたミラノが近寄ってきた。
「すいません努様。ナシルがご迷惑を」
「いや全然問題ないよ。それより様付けを止めてほしいんだが?」
「申し訳ございません。それは出来かねます」
「ごめんねお兄さん。お姉ちゃんは頑固だから」
「・・・ああ、頑固なのが伝わったよ・・・それより身体はどうだ?」
「うん!すっごい軽いよ!まだちょっとしんどいけど魔法を受ける前とは段違いだよ」
「一応経過観察をしておこう。効果が切れるとかは無いはずだが初めての魔法だからな」
「うん!わかった!それでそれで!今度はどうするの!」
すごくワクワクしているミラノ。どうやら努の魔法の実験を願っているようだ。
「・・・そうだな・・・」
悩む努。地球で考えてきたのは攻撃や防御などの戦闘用の魔法がほとんど。当然こんなところで使えるような魔法ではない。
すると、3姉妹や家の中を見回した努。
「・・・なら君たちも含めて綺麗にしてみるか・・・」
「「??」」
努は家の中を風で埃などを家の外に飛ばし水でタリア、ミラノ、ナシルの3姉妹を包み込み汚れを落とす。
「なにこれ!?すっごい!?」
「つ!?努様!?こ!?これは!?」
「・・・
それはただ水で身体を濡らしただけではなく身体を入念に洗ったかのような清潔さになった。その後の水は外へ。
「よし。中々きれいになったな」
初めての別々の属性の魔法の同時発動の成功に笑みを浮かべる努。そして当然タリアやミラノが努に魔法について聞こうとするとそれよりも先に動いたのはナシルだった。
「努さ「お兄さんって
「ナシル何言ってるの?この世界の人じゃないってどういう意味?」
理解できないミラノはナシルに質問をするもナシルはジッと努を見る。
「・・・いろいろと
「この世界に別の大陸が無いのは世界を何周も飛んで回ったジルオッド魔法聖が証明してる」
「・・・その人が嘘をついてるかもしれない・・・」
「たしかになんらかの理由で別大陸の発見を秘密にしているという可能性もある・・・でも仮に別大陸は無いという宣言が事実の場合お兄さんは別世界からこの世界にやってきた人っていう事にもなる・・・」
見合う2人。ナシルは努が別世界の人間と決定づけるものがなくしかし内心では自身の推理が合っていると確信している。
一方努はと言えばナシルの頭の良さに本当に8歳なのかと驚きが隠せない。
「・・・これが天才ってことか・・・」
その言葉はナシルの言葉を事実と認めた瞬間だった。
40歳独身。魔眼に開眼する プラントスクエア @igo0155
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