めがねフェチのお姉ちゃん
コラム
***
アタシの姉は眼鏡フェチだ。
視力も悪くないのに、毎日、気分に合わせて伊達メガネをかけるほどで、普通の人が見たこともないフレームも所持している。
しかもそれだけでは終わらず、部屋に飾ってあるぬいぐるみやポスター、さらには鞄につけるようなキーホルダー、ストラップのマスコットにも眼鏡をかけさせている。
ぬいぐるみやマスコットには手作りの眼鏡を、そしてポスターには違和感がないくらいのクオリティーで手書きで眼鏡を書き足す。
その情熱は両親や友人も呆れてしまうほどで、姉をよく知る人たちはもはや誰も気にも留めない。
だけど、アタシはずっと気になっていた。
だって姉は、アタシが生まれたときからずっと眼鏡フェチなのだ。
一体どうしてそこまで好きなのか……今日はついにその理由を訊ねようと思う。
「どうして眼鏡が好きなのかって? そりゃまあ理由はいくらでもあるよ。眼鏡と顔がマッチすることで生まれる美とかさ。あと眼鏡ギャップとか。他にも」
アタシが訊ねると、姉は眼鏡を好きな理由を話してくれた。
その話は止まることなく、もううんざりしてしまうほど面倒くさくなるほどだった。
聞き流しながらアタシは考えた。
どうやら好きな理由は一つではないようだ。
そして、そういう好きなものがある姉のことが、ちょっと羨ましかったりする。
アタシには、これといって好きなものはないから。
そんなことを考えていると、なんだか落ち込んできた。
すると、姉がアタシの顔にそっと眼鏡をかけた。
優しくゆっくりと、まるで赤ちゃんに触れるようにそっと。
「それあげるよ。なんかよくわかんないけど、元気だしな」
「お姉ちゃん……」
「ほらほら、笑って笑って。その眼鏡には、あんたの笑顔がよく似合うんだからさ」
姉は、アタシが落ち込んでいることに気が付き、励ましてくれた。
でも、やっぱり眼鏡なんだと思うと、本当に姉らしくて、なんだか笑ってしまう。
アタシが好きなのは……お姉ちゃんかも。
〈了〉
めがねフェチのお姉ちゃん コラム @oto_no_oto
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