萩市立地球防衛軍☆KAC2024その⑧【めがね編】

暗黒星雲

第1話 おっぱいスカウター少女

「あれが有原波里ありはらはりだ」

「可愛い娘ですね。赤い眼鏡が似合っている」

「彼女は友人からハリーと呼ばれている」

「ハリー? 女の子なのに?」

「以前使っていたメタルフレームの眼鏡が、あのハリーポッターの眼鏡とそっくりだったのだ。それでハリー」

「なるほど」

「その有原波里だ。今は赤いセルフレームの眼鏡に変わっているのだが、この赤い眼鏡が非常に怪しい」

「眼鏡が怪しいんですか?」

「そうだ。眼鏡だ。恐らく、あの眼鏡には超科学を駆使したスキャナーが搭載されている」

「普通の眼鏡にしか見えませんが」

「確かに、見た目は普通の眼鏡だ。しかし、彼女はこの眼鏡を駆使して女性の胸のサイズをぴたりと言い当てるのだ」

「なるほど。あの眼鏡はおっぱいスカウターの機能を有していると」

「そうだ。我らアルゴル族の技術でも実現可能なのだが、ごっついヘルメットと大仰なゴーグルを必要とする」

「確かにそうです。宇宙服のヘルメットみたいな大型の機器となりますね」

「そこでだ。有原波里の眼鏡を強奪する」

「了解です」

「お前が女に化けろ。そうだな。有原波里の親友である黒田星子くろだせいこが良いだろう。これが彼女のデータだ」

「身長159センチ、体重57キロ、スリーサイズは上から93、66、96……ちょっとぽっちゃりですね」

「そのぽっちゃりが有原の好みらしい」

「わかりました」

「おお。そっくりだ。このたわわな胸元は完璧だ」

「どさくさに紛れて触るんじゃねえ!」

「すまん。では黒田星子を装い有原波里に接近。催眠スプレーを使って眠らせてから眼鏡を奪え」

「了解」


 ここは海岸線の国道。

 その歩道を一人の少女が歩いている。


 彼女の名は有原波里。

 いつもは親友の黒田星子と綾川知子の三人で行動しているのだが、今日は何故か一人だ。


 その波里に一人の少女が近寄っていく。ぽっちゃりとした体形の黒田星子だ。


「ハリーちゃん。一人で何してるの?」

「お散歩です。星子ほしこちゃんは?」

「私はハリーちゃんを待ってたの」

「どうしたん?」

「あのね、お家でね、一緒に本でも読みたいなって」

「読書かあ。星子の趣味ってやっぱりアレだよね」

「アレって?」

「ほら、何て言ったっけ?」

「え?」

「エンジンのオクタン価とブースト圧がどうのこうの……みたいな? それ、よくわかんないんだよね」

「え? オクタン価……ブースト圧」

「あ。これやっぱり偽物だわ。ミサキ姉さま。出ましたよ」


 波里と偽の星子の間に、まるで瞬間移動したかのようにララが現れた。ララは手りゅう弾のようなモノを握っており、そのピンを抜いた。


「プレゼントだ。受け取れ」


 ララは手りゅう弾を放り投げたと同時に波里を抱きかかえ、数メートル後方へと瞬間的に移動していた。


 手りゅう弾は地面に落ちると閃光と電気火花を撒き散らした。偽物の星子はその電気火花を真正面から浴び、全身を痙攣させていた。そして、星子の姿は環形動物の集合体へと変化した。人の姿を維持できなくなったそれは地面の上で大きな塊となってもぞもぞと蠢いていた。


「姉さま。ナパームで燃やしても?」

「ダメ。アルゴル族は貴重なの。ほら。麻酔液をかけて、このバケツに入れて。ああ、トングで潰しちゃだめよ。優しく掴んで」

「はいはい」 


 ララと羽里は金属製のトングを使って地面でうごめく環形動物をつまみ、金属製のバケツへ放り込んだ。


「これ、面白いですね。ミミズが……人間に化けるって」

「でもね、波里ちゃん。このミミズに寄生されると体を乗っ取られるのよ」

「ああ、それは嫌かも?」

「だよね」

「ところでミサキ総司令。ブラのサイズはH70で正解ですか?」

「ゴホン! どうしてわかったの?」

「私の特技ですから。まあ、トップは98から100なのは確実で、問題はアンダーがいくらってとこなんですよ。今日は勘が冴えまくりですね」

「凄い才能ね。他の人の診断をしちゃだめよ。長門さんとララさんは特に」

「ああ。貧乳コンプレックス」

「うるさい!」


 相変わらずほぼ100%的中する波里のおっぱいスカウターであった。この、波里のスーパー的中率はあの赤い眼鏡のスキャン性能が良いから……という事になっているのだが、もちろん学園内のネタである。


 そのネタについて、波里の親友である綾川知子と黒田星子にしつこく質問した不審人物がいた。この事を怪しんだ綾川知子がミサキ総司令に相談したことで、アルゴル族による陰謀ではないかと疑われた。


 そこで、波里を単独行動させてララとミサキがバックアップするという作戦が考案されたのだが……。


「それにしても、間抜け過ぎませんか? 変態おっぱい星人の特技と特殊眼鏡によるスキャン効果を混同するとか」

「まだ若い群体なんでしょう。これが年を経て個体数が数倍になると侮れない存在となります。とにかく、大変貴重な実験材料が入手できました。今夜は乾杯よ!」

「あの。私たちも参加していいですか?」

「ええ。いいわよ。今夜はみんなで大騒ぎしましょうね」

「わーい」


 有原波里の特技おっぱいスカウターと彼女の赤い眼鏡が囮となり、侵略宇宙人であるアルゴル族の陰謀を未然に防ぐことができた。おっぱいスカウターと赤い眼鏡が地球を救ったのである。


【おしまい】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

萩市立地球防衛軍☆KAC2024その⑧【めがね編】 暗黒星雲 @darknebula

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ