【KAC20248】めがねとは

こなひじきβ

めがねとは

 俺にとってめがねとは、見るものや思考を切り替えるスイッチのようなものだ。


 今から勉強するぞ、と思った時は真面目そうに見える黒縁で四角い眼鏡をかければやる気が出てくる。周囲から似合っていないよと言われても関係ない。俺はこの眼鏡じゃないと気持ちが入らなくて集中できない。


 外に出かけようと思ったら薄い縁のやや丸みを帯びた眼鏡をかける。この眼鏡が一番、近くの公園の緑がより鮮明に見える気がするのだ。勉強や他のやることを一度忘れられてリラックスできる。


 人と会う時にはキッチリとしている様に見せるための飴色の縁の丸眼鏡だ。ちょっとだけ真面目から外す事でセンスがあるのでは無いかと思わせられる。そのおかげか友人から何かと頼られる事が多い。


 本や映画などの物語に浸りたい時は、緑の縁の細めの楕円型眼鏡を選ぶ。自分が世界に入り込みたいタイプなので、お話の一点に集中したい。だから敢えて眼鏡を小さめにする事で視野を狭くしているのだ。


 自分のやりたい事に応じてかける眼鏡を変える。俺の机の引き出しには大量の眼鏡が詰め込まれている。勿論、全部ちゃんと使っている。これが俺にとってのめがねだ。


 


 ここまで俺の眼鏡への拘りを語って来たが、俺にとって扱いである。眼鏡はあくまで道具で、かけると何らかのステータスが得られるものだ。じゃあめがねとは一体何なのか。


 俺は眼鏡をかけようと決めて、種類を選んで、その結果を得るまでの一連の流れを指す言葉だと思っている。眼鏡という道具を使って、自分が何をどの様に見るのかを選ぶ行為なのだ。全てが個人の自由であり、個人の責任でもある。


 初めて眼鏡をかけてみた時は目から鱗が落ちた。自分の選択で、自分の見る世界を変えられるという事を知ったから。あの時俺は、めがねに魅せられたという事だ。



 とはいえ、別にめがねで無くても見る世界を変える手段はきっとあるのだろう。何を選ぶかも個人の自由なのだから。

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