千佳と梨花の、人生で初めての眼鏡屋でのお買い物。

大創 淳

第八回 お題は「めがね」


 ――事の始まりは、文字が見にくくなったこと。


 それもつい最近で、しかも、しかもだよ、それは僕だけじゃなかった。



 僕と同じ一人称が僕の、まるで鏡を見ているかのように、性別も僕と同じボクッ娘。双子の姉の梨花りかもそうだった。そして僕は、妹の方の千佳ちか。そして、タイミングまでもピッタリだった。


 文字が見にくくなった時期……


 そして今、カントリーロードを走るバスに乗っていた。春休みも満喫。バスは町から町へ……とあるアイテムを手にするために、僕と梨花は仲良く座席に座っていた。横並び。


 ユラユラと、まるで揺り籠のように……


 コクリコクリとなるものの、興奮にも似た、お初にお目にかかるお店。


 そのお店は眼鏡屋。ミヤネ屋という名の眼鏡屋。僕らにとっては人生で初めての、眼鏡屋に入店。姉妹仲良く、まるで『はじめてのおつかい』のような心境。つまり眼鏡を買いにきたの。梨花も僕も、綺麗な女性店員の案内で、まずは視力検査……


 その結果は下回った、一・〇よりも。なので、眼鏡をするように。


 今はまだその途中、眼鏡はある意味、どれもがオーダーメイドだ。


 黒縁の濃い感じの眼鏡だろうか? いいや、これもまた偶然の一致。柔らかな感じの丸く大きな眼鏡。しかも、どうして? 僕も梨花も同じのを選んだの。それだけじゃない。


 これって……


 葉月ちゃんの眼鏡と酷似している。そして掛けてみる。眼鏡を。見えるものが変わっていて、丸く柔らかな感じと反比例に、シャープに見える。テレビで放送されているアニメもドラマも。視力は、眼鏡を得たなら、あまり大したことが無いような、そう思われる。


「お似合いね」と店員さんは言っても、僕の思う気持ちとは違っていた。


 その眼鏡は、御眼鏡に適っているのだろうか? その基準は僕ら……お買い上げになった御客様のことだ。広くなった視野は、まるで大人の味。これまでよりも一回り広がって見える。僕と梨花、お互いがお互いを見る。クスッと笑うのも同時だった。


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千佳と梨花の、人生で初めての眼鏡屋でのお買い物。 大創 淳 @jun-0824

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