なぜ奈良ひさぎは成人向けと非成人向けの区別に厳しいのか

奈良ひさぎ

本文

短編やらエッセイを書く時はいつもサブタイトルをどうするか悩む。今回は前書きも後書きもないのに「本文」と名付けてみました。意味は全くありません。



さて、私奈良ひさぎは成人向け小説投稿サイトであるノクターンノベルズでも活動している物書きです。元は全年齢の方で活動していたのですが、そちらにも手を出してそろそろ5年くらいになります。

全年齢向けだけを書いていた頃はあまり意識していなかったのですが、小説投稿サイトでは意外とギリギリを攻めたどころか、攻めすぎてちょっとアウトなんじゃないかという非R18小説を時々見かけます。このような小説が出てきた場合、作者のタイプを分類するなら2軸で評価できるでしょう。それは「メインで書いているのが全年齢かR18か」と、「わざとかわざとじゃないか」です。


①「メインが全年齢で、わざとじゃなくうっかり性描写を強めに書いてしまった」という場合は、ある種仕方がないかもしれません。小説投稿サイトのほとんどはギリギリのラインを攻められないように、どこからが全年齢、あるいはR15で、どこからがR18かという具体例を出さない方針を取っています。ざっくりと、例えば大事なところや肝心のシーンがもろに描写されているのはダメだよ、ということは教えてくれていますが、そんなことは並の人間であれば理解できます。そもそも規約やガイドラインをちゃんと読めとか、危ない橋を渡るような真似をするなとか、言いたいことはありますが、過失であればまあ致し方ないでしょう。よほど直接的な描写、重症でない限り、一発BANされることはなく警告で済むでしょうし、次から気をつければいい話です。


②「メインがR18で、全年齢を書いたつもりがうっかりアウトな性描写を書いてしまった」という場合も、①ほどではないですが仕方がない部分もあります。一次創作のR18作品を投稿できる大手として、ノクターンノベルズは多くの方が知るところでしょうが、ここは何でも許されている場所と言っても過言ではありません。本当に何をやっても許されるので、古今東西、いろんな性癖(性的な意味で)を取り扱ったいろんな作品が存在します。法律さえ侵さなければ大丈夫とも言えるでしょう。

そんな魔境の常識を他に持ち込むのもどうかとは思いますが、何でも許されているがゆえに、全年齢とR18の境界線が分からなくなってしまい、結果ラインを踏み越えてしまうことがあるかもしれません。そんなノクタ作家でも性描写の程度ではなく、性描写かそうでないかの差はさすがに分かると思いますので、「これはエッチかな?どうかな?」と思った描写をそもそもするなという話にはなりますが、まあ過失で片付けることも可能でしょう。


問題はメインの場所に関わらず、わざとラインを攻めた結果はみだしている場合で、これらは救いようがありません。そもそもギリギリを攻めてほしくなくてぼかした規約・ガイドラインにしているのに、運営にラインを公開してくれと無茶を言ったり、どれがアウトか言ってくれないと分かんないよとかすっとぼけた頭の悪いことを言ったりする人も同じレベルだという偏見を持っています。

③「メインが全年齢で、ギリギリに挑戦しすぎた結果、ラインを踏み越えてしまった」のであれば、まだリカバリーがきくかもしれません。創作においては新しいことに挑戦し、自ら道を切り拓くという行為が非常に大事なので、これもまた挑戦の一つであるとポジティブに捉えれば許せるかもしれません。それでも故意なのでダメなものはダメですが。

④「メインがR18で、これ見よがしにラインを攻めて結果踏み越えてしまった」のが一番ダサいし、物書きの風上にも置けないと思っています。過激な表現を使っていますがこれが案外多い。


ご存じの方はご存じかもしれませんが、小説家になろうの方では「書き出し祭り」という非公式のイベントが定期的に開催されています。冒頭1話だけで勝負して、続きが読みたいかなどの軸で競う、文字通りのお祭りなのですが、当然ノクタ作家も過去に何人か参戦しています。ノクターンに作品を上げるようになってからも私は何度か書き出し祭りに参加しているので、この中の一人ですね。

節度を守り、真面目に書き出し祭りに臨んでいるノクタ作家諸氏もおられますので、全員ではなく、あくまで一部の人間であるということを強調しておきますが、「それ題材的に全年齢~R15で許されるの?」という作品をお出しする人間がちらほらいます。それもいい年した大人(18歳以上なので紛れもなく大人なのですが、本当に大人なのか疑うくらいみっともないという意味)なのが余計にがっかり。私は過去にタイトルあらすじだけで感想を述べてみるツイッターのスペースを開いたことがあり、その時にこの作品にぶつかって「こんなの本当にいいのか?書き出し祭りそのものの品位が貶められないか?」と散々言って、リスナーの方にそこまでではないのではと諫められた記憶があります。確かに直接性描写があるわけではないですし、そもそもタイトルとあらすじで煽っているだけで、ふたを開けてみたら本文はいたって健全でした、というオチになるかもしれませんが、そもそもR18を連想させるようなワードをタイトルやあらすじに使う時点で負けというか、創作への向き合い方を間違えていると私は思うのです。


「別に誰かがギリギリを攻めたり、ラインを越えた作品を書いたって、お前に迷惑がかかるわけじゃないんだしいいじゃん」と思われる方もいるかもしれません。確かにすぐには迷惑はかからないでしょう。しかし、「ノクタ作家ってそういうことする人間の集まりなんだ」と思われるのが私はすごく怖いのです。たった数人の行いで、ノクタ作家全員がデリカシーのない人間だとみなされるのはごめんです。主語が大きいという指摘もありそうなので一応言っておくと、少なくとも私は嫌です。

杞憂ですか?ただ、全年齢をメインで書く物書きが同じことをやっても、連帯責任的に全年齢作家全員がみっともない人間だとみなされることはないと思いませんか?


なぜこんなことを思ってしまうのか、それはやはり私の中に多少なりとも、「全年齢作品の方が上でR18作品は下」という偏見があるからではないかと思います。はっきり上下関係とまではいかなくとも、ちょうどビデオ屋さんののれんのような、正体の分からない壁が二つの間にはある気がします。

これがただのR18小説ではなく、フランス書院作品に代表される、いわゆる「官能小説」であれば、上下関係などというものはないでしょう。何でも許される、極端な話エッチなら何でもいいノクターンという場で投稿されている作品だからこそ、こういう思考が知らず知らずのうちに生まれているのかもしれません。私自身、R18作品を書く時は、筆致の美しさとか情緒も多少大事にするものの、「このシチュエーションいいでしょ~」という博覧会に出展する気分でいます。いろんなジャンルを好む人間がいるからこそ、「オレの考えたこういうシチュどうよ、面白くない?」という発想は全年齢作品の場よりも重視されるのではというのが、個人的な意見です。小説というのは元来芸術の一種ですから、芸術性の高さという物差しで見ると、単なる性癖・シチュエーション博覧会では、情景描写や心情描写に工夫が凝らされた作品と比べて一段劣ってしまいます。目的から何から、全年齢作品の投稿の場とノクターンでは違うのだから、そもそも比較するなという声が出るかもしれません。ただ、どちらも人に説明する時は、同じ「小説」というくくり方をしませんか?にもかかわらず比較するなというのは、ちょっと無理がありませんか?


ノクターンという場に投稿するにあたって、博覧会に出展する気分でいるなと言っているわけではありません。悪口になりますが、そのノリを全年齢の場にも持ち込んで、イタいとこ見せてるくせに気持ちよくなってんじゃねーよ、ということです。いい大人なんだから切り替えはちゃんとしてほしい。私が交流しているノクタ作家諸氏はほとんど良識ある方ばかりなので、観測できる範囲で今のところ大きな問題は起こっていないようですが、いつか痛い目を見るのではないかと、もやもやした気持ちを抱えています。そもそも物書き界隈なんていう蟲毒に一定のモラルを期待するなんてハナから間違っているのかもしれませんし、深く考えすぎ、お前生きづらそうだな、と思われるかもしれませんけどね。

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なぜ奈良ひさぎは成人向けと非成人向けの区別に厳しいのか 奈良ひさぎ @RyotoNara

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