人生やり直したけど質問ある?

ワシュウ

第1話 喧嘩の理由は覚えてない

「最低!もう知らない!」


バシンと頬をはたいて、めがねが飛んだ


「っ……好きにしろ」


落ちためがねを自分で拾って、睨んでくる女を見る


「さようなら…もう会わないわ」


「……」

無言で俯き

去っていく女の後ろ姿を見る

今走って追いかけて、後ろから抱きしめたら、間に合う……遠ざかる姿にそんな事を考えた




20年後―…

どこで間違えたのか

痴漢冤罪で捕まり、会社に噂が流れて居辛いのを我慢したが、結局クビに

両親が交通事故で他界、妹夫婦は遠方

気がつけば50手前で下腹が出てきて抜け毛が気になる


昨日、床に落ちためがねを踏んで拾ったせいか

昔の事を夢に見た

あの時追いかけたら……俺は夢の中でも追いかけられなかった

好きだった女の最後の顔が、怒った顔じゃなくて悲しそうな顔をしてた…今になって気付いた


めがねを買いに、ちょっと遠くのショッピングモールへ行くと偶然彼女を見つけた

運命とかそんなロマンチックな出会いじゃなく

向こうは子連れで買い物に来てた

子どもは彼女に似た女の子が2人で、もう大きかった

すれ違っても俺に気づくことは無かった

時の流れは残酷だ


その帰り、信号無視の車にはねられた

タバコをくわえた顔面蒼白のジジイが車から降りてくる所が見えた気がした




めがね買ったばっかりだったのにな――…



「ご、ごめんなさい、めがね新品だったの?!

叩いといて何だけど、わざとじゃないの…ごめんなさい!」


俺の落ちためがねを拾う彼女がいた


何がおこった?

理解できずに眼の前の光景に驚愕した


「私そんな強く叩いた?!フレームが歪んでるし、レンズにヒビが入ってる!?

弁償するわ…行きつけのめがねショップはあるの?」


「え、あ、え?」


「顔、腫れてない?

赤くなってる…叩いちゃってごめんなさい。

とにかくめがねは弁償するわ…困るでしょ?」


そこにはオロオロした泣き顔の困った顔をした彼女がいた

20年前のあの時の夢か?


俺の手を引っ張って歩く彼女を後ろから抱きしめた

「好きだ結婚しよう」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人生やり直したけど質問ある? ワシュウ @kazokuno-uta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ