KAC20248 奪って、告って、笑った。
久遠 れんり
その日彼女は、実行する。
幼馴染みの凪と奈美。
これは、二年生になる少し前。
春休みのこと。
高校生となり、急に背が伸びかっこよくなってきた彼。
そう、凪は幼馴染み。最強の関係と巷では言われている。
でも凪は、名前の通り穏やかというか、のんびりしている。そして何処までも優しい。
つまり待っていても関係が進むことは無く、イライラし始める。
部屋にいても、すぐ横で狸寝入りをしていても手は出てこない。
うずうずし始めた奈美は計画をする。
そして、最強の変身グッズ。メガネを手に入れ、作戦を実行する。
部屋にいると、赤く染まる光の中、凪が寝ていた。
そっと、忍びより鼻の頭を突っつく。
だけど、反応をしない。
ふむ。今日しかない。
はしたないと思われようがかまわない。
告白をして、関係を変えるのも、関係を持ってから告るのも同じ事。
少し無茶な思考が、奈美の頭の中を占め、本人を自己暗示に持っていく。
世界中で、そして有史以来行われている営み。
なんで否定などされようか。
今私は、一歩先に踏み出す。
メガネを装着し、下着をそっと脱ぐ。
子供の頃には見たが、この一年で、かなり凪は進化をしている。
どんな凶暴な物になっているのか、見ない限り判断が出来ない。
ドキドキしながら、取り出す。
「全然違う」
少しいじりながら、自分もいじる。
その雰囲気のせいなのか、あっという間に準備が出来てしまう。
恐る恐る、繋がってみる。
「あっこれ」
ふと見ると、凪の目が開いている。
凪は寝ていて、妙な感触を感じて目を覚ます。
するとそこには、奈美が変身メガネ眉と髭付きをかけて、またがっていた。
スカートでどうなっているのかはわからない。だが感覚はある。
「奈美。何をしているの?」
すると彼女は、なぜわかったというような顔をする。
「親睦を深める儀式?」
「そのメガネは?」
「変装。少し恥ずかしいし」
「そうなんだ」
起き上がり、抱っこする。
「あのねえ。私メガネ仮面だけれど、凪が好き」
「ありがとう。高校を卒業するまでは良いかと思っていたけれど、僕も奈美が好きだよ」
そう言って、軽く抱きしめる。
だけどそれは、奈美にとって最強のクリティカル攻撃だったらしい。
突然「ふみゃあぁぁ」といって、痙攣をした。
なんだか、力の抜けた彼女。
ふと、めがねを取り、自分でかけてみる。
少しもうろうとした感じで、彼女は俺の顔を見る。
だが見た瞬間、ツボに入ったようだ。
お腹辺りに振動が伝わってくる。
「うっ。それだめ。やめて。可笑しい。でも笑うと振動が駄目。ああいやっ」
彼女は口を押さえ、笑いながらもじもじする。
結局、俺がはてても、彼女は笑いっぱなし。
その日彼女は、関係の更新と、妙な性癖を発見した。
そして、彼女は別の発見も。
「なんだか、ムラムラすると思ったら、花粉症だったの」
なんか色々と、彼女は特殊なようだ。
「アレルギー反応から、ホルモンが……」
説明をする彼女に向かい、黙って変装メガネをかける。
「ぶはっ」
この笑いは、どうあっても制御ができないようだ。
そして笑い出すと、俺を襲ってくる様になってしまった。
「花粉関係ないよね」
「あるんだもん」
彼女なりの、認めたくないものがあるようだ。
KAC20248 奪って、告って、笑った。 久遠 れんり @recmiya
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