めがね

アキノリ@pokkey11.1

第?章 幼馴染の想い

1つの想い

頬に当たる眼鏡

3月9日。

卒業式の終わった空はいつもの青天井だった。

俺、富山竜星(とみやまりゅうせい)はそんな青天井を見てから駅から出て来る。

明日から一人暮らしだ。


それから自宅に帰ろうとして顔を横に向ける。

そこには幼馴染の杉山凜花(すぎやまりんか)の家がある。

家が隣同士なので...何時も親しげに会話しながら学校に通っていた。


...のも1年前の話だ。

俺は高校を卒業してしまった。

だけどアイツは進級できずそのまま高校2年生のままだった。

それは何故かといえばアイツは引き籠っている。

その原因は...きっと俺にある。


俺が...彼女を傷付けたのだ。

だから引き籠ったのだ。

どう傷付けたかって?それは簡単だ。

俺が...彼女。

「疲れているから学校に行かない」と言っている彼女を無理矢理、学校に凜花の親と一緒に行かせようとした。


それがこの結果になるとは。

反省しても後悔しかない。

思いながら俺は凜花の家のインターフォンを押す。


すると凜花の母親の寧々さんが出て来た。

それから俺に対して「卒業おめでとう」と言ってくる。

俺はその言葉に頭を下げてから「有難う御座います」と挨拶をする。


「...竜星くん。...凜花の事を気に掛けてくれて有難うね。いつも」

「...俺に出来るせめてもの償いですから」

「だけどそんなに思いつめなくて良いのよ。...有難いけど」

「俺は...彼女を傷付けた。...それだけですよ」


そう言いながら俺は目線を横に向ける。

それから家の中に入ってみる。

そして寧々さんと共に二階に上がる。

父親が急性心筋梗塞で亡くなって半月だ。


「...凜花」

「...」

「...すまないな。俺は大人になった。...だけどお前を待っているから」


ドアに手を添える。

だが凜花からの返事はない。

俺は真剣な顔をしながらドアに手を添える。

そして涙を浮かべた。


「...すまない」


そう呟く。

それから寧々さんを見る。

寧々さんは頷きながら「じゃあ後は2人で」といそいそと去って行く。

俺はその姿を見ながらドアを背にして崩れ落ちる。


「...凜花。お前、日が当たらないから目が悪くなったってな」

「...」

「...部屋から出てきたら良いんじゃないかな。俺はお前が目が悪くなったのは...それが原因だってお思っている。...お前が...引き籠っているから...ってまた説教だって言われそうだな。お前それが原因で引き籠ったってのに」


俺は首を振ってからそのままその場から立ち上がる。

「俺な。高校を卒業したんだ」と言いながらだ。

そしてこの言葉を呟く。

「俺、東京の大学に行くから。...一人暮らしするんだ。だから一応今日で最後だ。ここに来るのはな。鬱陶しい野郎だったろ?すまない」と言いながらドアの手を離す。

もう既に5か月以上アイツを見てない。

どんな顔をしているだろうな。


「...じゃあな。凜花」


そう呟いた瞬間。

ドアが開いた。

それから黒縁眼鏡を掛けた美少女が現れる。

可憐な黒の長髪の少女。


「...待って。それ本当に?」


その様に聞いてくる。

俺はその似合う黒縁眼鏡に「お、おう」と返事をする。

それから「実は東京の大学に進んでから勉強しようってな」と言う。

すると凜花は「...」と悲しげな顔をする。


「...まあでも楽しかったぞ毎日この場所に来るのが。...ようやっと居なくなるからな俺が。...もう口出しはしないから」

「...そうだね」

「...ゴメンな。鬱陶しい野郎で。...暫くは帰って来ないから」

「そんな事は...ない。私もおかしいって思った。私自身が」


言いながら俺を見る凜花。

日に当たらない為に身長が伸びてない。

20センチぐらい差が有るが。

だけど本当に美少女だよなコイツ。

そんな事を思いながら凜花の頭に手を添えて「じゃあな。明日、飛行機で発つんだ俺」とニコッとする。


「...分かった。だけど」

「...おう」

「...私は...貴方を待つ。学校に行く」

「...え?」


まさかの言葉に俺は凜花を見る。

凜花のいきなりの決意に俺は驚いた。

それから...「だから待っていてほしい」と俺を見てくる。

俺は「???」と思いながら凜花を見る。


「凜花?どういう意味だ」

「...分からなくて良い。...今日で良かった。決意も固いし。しゃがんで」

「...???...しゃがんでどうする?」

「良いから。目を閉じてしゃがんで」


そして俺は訳も分からずその状態をする。

すると胸倉が掴まれる感触があり。

角ばった固いものが俺の頬にゴツンと当たる。

そして熱い何かが唇に当たっ...は!!!!?


「目を開けないで」

「...ま、待て。お前今何をした」

「内緒。...さて私はこれでぱわーを貰った。頑張れそう」

「...!?」


俺は目を開ける。

凜花は眼鏡を外しながら微笑みを浮かべていた。

それから「どんなに遠くに居ても私は頑張れる。これでね」と部屋から出た。

そして俺の手を握る。


「...大学、頑張って。私は高校を頑張る」

「...お前...」

「竜星。毎日来てくれてありがとう。私が引き籠っていて...連れ出そうとした貴方を悪く言ってごめんなさい」

「分かるがお前...一体何をしたんだ」

「それは内緒」


それから凜花は唇に人差し指を添えてから歩き出す。

俺はその姿に盛大に溜息を吐く。

そして高鳴る心臓に。

胸に手を添えて赤面で凜花を見た。


fin

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