【KAC20248】全部盛り2024

龍軒治政墫

8種盛り

 俺には三分以内にやらなければならないことがあった。

 今日は不動産屋さんの営業と住宅の内見があるのに、まっっっっっったく準備が出来ていない。

 なぜなら、さっき起きたからだ。

 もう時間が無い。なので、俺はバタバタと準備を始める。


 なんで、こんなに寝坊するようなことになったんだろう。

 昨日は……確か箱推ししているアイドルグループのコンサート映像を見ていた。終わってから、燃え尽きるように眠ってしまった――のかなぁ? 終わった後の記憶が無い。

 でも起きたってことは、寝たんだよな?


 いやいや、そんなこと考えている時間は無いんだよ。

 早く準備して行かなきゃ。


「あいたたフタタ!」


 テーブルの脚に足の小指をぶつけてしまった。

 ああっ!


「さ、さくれぇ……」


 ぶつけた衝撃で、テーブルの上にあったサクレがこぼれてしまった。昨日食べている途中で眠ってしまったと思われるので、時間が経って溶けて水になったサクレが……。

 もったいない。

 でも、片付けている時間も無い。

 フタバ食品さん、ごめんなさい!


 ……ってぇ、時間は?

 壁に掛けてある三針アナログ時計を、目をはなさないでジッと見つめる。


 10秒…………20秒…………30秒…………。


 なんでこういう時って時が進むのが早すぎるんだ! ジッと秒針見ちゃったよ!


 もう出ないと間に合わない!

 トリあえず、出よう。行ってしまえばなんとかなるだろう。足りない物があれば、不動産屋さんの営業に謝ろう。うっかり忘れたって。



 俺が外へ出ると、丁度隣に住むお姉さんも出てきた。美人でちょっと気になっている人だ。

 彼女は俺を色めがねで見るというか、怪訝けげんそうな表情で見てきていた。


「? どうかしましたか?」

「…………ヘンタイだったんですね。失望しました」


 彼女の目線はやや下の方を向いている。

 俺は下を見ると――何も着ていない、全裸だった。


 うっかりじゃ済まない。

 服が足りなかった俺は、まずお隣のお姉さんに全裸土下座で謝ることになったのである。

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