第5話 熱暴走する霜川君なのです。
「霜川君、ありがとう。これはお礼だ」
霜川君を抱きしめた彩花が、彼の頬にキスをした。突然の事に霜川君は激しく動揺する。
「あああああ。そんな……口づけなど……あああああ」
今時、小学生でもここまで動揺する事はないと思われる。しかし、霜川君は滅茶苦茶
「どうした? もっとして欲しいのか?」
彩花は霜川君に胸を押し付け、再び彼の頬にキスをした。
「ああああああああああ……」
あまりにも初心な霜川君は、勝手に熱暴走している。
「綺麗な女子にキスされちゃったああああ……バチン!」
興奮した霜川君のOSが勝手にダウンした。
「現在、原子炉内ノ温度ガ上昇中……」
霜川君の機械音声だ。これは時々出しゃばるBIOSプログラムである。
「え? 霜川君は原子炉搭載型なのか?」
「ソウデス。炉内温度ガ1500度ヲ超エマシタ」
「それってヤバくない?」
「緊急冷却材ガ必要デス。炉心温度ガ2000度ヲ超エルトメルトダウンシマス」
「マジ?」
「マジデス。消防隊ノ出動ヲ要請シマス」
学園長室は騒然とした。とは言うものの、焦っているのは学園長だけだったのだが。
「こんなバカなロボを作ったのは誰だ?」
「貴方の親友のクソじじいです。超能力でどうにかして下さい。」
「どうにもならん。取り敢えず校庭に移動するぞ」
霜川君の金属製のボディがふわりと浮き上がった。彩花と学園長も一緒に浮き上がり、そのまま校庭の真ん中へと移動していく。
「これは
「何時も言っとるだろ。儂は超能力者だと」
「それはネタだと思ってました」
「ネタだと思わせておくところが肝要なのだ。人前で使うつもりはなかったが、緊急事態なので仕方がない」
霜川君の自動通報システムのお陰で、消防車三台とレスキュー隊、そしてパトカー五台が校庭に集合した。レスキュー隊が持参した緊急冷却材を注入された霜川君は何事も無かったかのように復活した。
「炉心温度280度デ安定シマシタ。ドウモオ騒ガセシマシタ…………………………って? 僕はどうなったんですか?」
「私がキスしたら熱暴走した。覚えてる?」
「かろうじて覚えています」
「あの程度で熱暴走するなんて思ってもみなかった。以後気を付ける。霜川君も、ああならないように気を付けるんだ」
「わかり……ました」
などと返事をしたものの、霜川君は穏やかではいられなかった。それは、彩花のイメージ画像が霜川君のメモリーを占領してしまったからだ。
これが初恋なのだと、彼が気づくのはもう少し先である。
生活支援ロボの霜川君なのです。 暗黒星雲 @darknebula
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