【KAC20247】個性と言う名の色

こなひじきβ

個性と言う名の色

 僕には、色が見える。ただ見えるという話ではなく、人の周りに色が見えるということだ。色はその人に纏わりついていて、まるで雨合羽を来ているようにはっきりと色がわかる。


 誰にこの話をしても、共感してもらえなかった。寧ろクラスの人とは距離を置かれるようになった。色が見えているのは、どうやら僕だけのようだった。


 僕と目が合うと嫌そうな目をしてくるあの男子は、目に入るだけで寒さを感じる青色。

 平和主義のために目を合わせないあの男子は、目立つまいとひっそりしている緑色。

 僕を気味悪がるあの女子は、見れば見るほど不安になる黒みがかった紫色。

 持ち前のリーダーシップでクラスの雰囲気を保とうとするあの男子は、光り輝いて眩しい黄色。

 クラスのアイドルのように振る舞うあの女子は、甘ったるさに気が滅入るほどの桃色。

 

 人の色には、時折他の人の色が混ざってくることが多々ある。他の人と接する事で、相手の色が混ざっていくのだ。青色と緑色の二人と一緒にいる、かつてベージュ色だった彼は、二人の影響を受けた結果青緑に染め上げられた。控えめな性格からか、僕と話をすることもいつからか無くなっていた。


 色は混ざりすぎると黒くなってしまう。それも直接周囲と関わらずとも、色の影響を受けることは多々ある。これまでに見かけてきた様々な人の色を見続けてきたせいなのか、僕自身はすっかり真っ黒になってしまった。

 


 そんな色がひしめき合う教室の中で、唯一無二の存在である彼女は窓際の席で今日も空を眺めていた。


 彼女は長い黒髪を靡かせており、清楚を人の形にしたらあんな感じなのだろうとまで思える。そして肝心の色はというと、まるで無色透明。透き通っている様に見えるのだ。


 何かしら色がある事が当たり前だと思っていた僕には、混じりけが一切無い彼女はあまりにも綺麗すぎる。


 

 彼女には、ずっと無色透明のままでいてほしい。僕の初恋は、不透明な僕の黒を混ぜる事は許されないのだから。

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