反生
@gomadangohd
第1話
1990年8月20日。
横浜「鶴見」
とある産婦人科で産声をあげた私は、出産予定日よりも少し遅く産まれた健康児だった。
幼い時から父が転勤族だったこともあり、横浜に帰る6歳まで何箇所かを転々とすることになる。
私が産まれ、最初に引越した場所は愛知県名古屋市のマンションであった。
どこにでもある普通のマンション。
幼いながら日々の生活に不満を感じたことはなかった……と思う。
正直覚えていない。
記憶にある最初の景色は再度父の転勤が決まり、引越しの準備をしている場面。
父と母がとあることから口論となり、父が投げた段ボールが私の鼻にクリーンヒット。
鼻血がダラダラと流れる中、母が慌てて駆け寄り、ティッシュを顔にあてがう。
そんな記憶だ。
父は悪びれる様子もなく引越しの準備を進める。
私は泣き続けた。
兄と母は父に対しどん引きしていた。
数ヶ月後、私たち一家は新天地の茨城県水戸市に引っ越す。
その頃から私の頭のハードディスクは起動開始。
幼少期の記憶はほとんど水戸在住時の記憶となった。
その頃、兄の影響で怪談を好きになったり、時々自身でも怪奇現象に苛まれることになる。
私が体験した最初の怪奇現象は「ある踏切近くのゴミ捨て場に幽霊が出現。その幽霊と対峙する。」というものだ。
今回その話は省くことにする。
兎にも角にも私が現在怪談活動に携わらせていただいてるのは水戸在住時の思い出があったからこそである。
父は元々DV気質ではあったが、この頃から拍車をかけどんどん酷くなっていった記憶がある。
そんな父の言動に母は毎日苦しんでいた。
時は流れ私が6歳の時、生まれ故郷の横浜に引っ越すこととなった。
そして小学校に上がると家の中は両親の怒号が飛び交う戦地となった。
父は女好きである。
兄が産まれるはるか前、母の身体に生命が宿った。
残念ながらその子は産まれてこれず、母は大層悲しんだ。
そんな中父は不倫をしていたのである。
そういう事はもうしないと泣きながら誓った父だったのだが、私が6歳の時。
裏に女がいるのでは無いかと母が勘ぐり両親は大げんか。
学校から帰るのが嫌になる家だった。
両親が話しているのを見ると心拍数が上がるのである。
いつ喧嘩がまた始まるのだろうか。
今日はやめて欲しい。
そんな思いも届かず、両親は喧嘩し続けた。
兄はなるべく両親の嫌な部分を見ないよう避けていたと思う。
それが少し寂しい気持ちもあったのだが、大人になってから兄に聞くと、「まともに見ていたら俺の心が壊れそうだった」とのこと。
兄も苦しんでいたのだ。
私は避ける方法が分からなかったため、いつも真正面から両親の喧嘩を見ていた。
大人となった今でも、両親が2人いる場所に居ると私の心拍数はどんどん上がるようになっている。
どちらかが欠けるまでこの状態は続くのだろう。
小学3年生になると太っていた私は学校の皆から煙たがられるようになる。
いじめらしきものもあったのだが、比較的私のメンタルは強かったのでやり返していた。
しかし中学に上がるとより一層デブいじめは過激化。
クサい、キモい、デブ、のろま等と言われるようになり、クラスからは孤立。
友達も何人かはいたが、本格的な友達と呼べるような存在はいなかった。
学年の中で特に太っている三人を選抜し、皆の前で縄跳びをさせられたこともある。
デブ三銃士と呼ばれていた。
跳んでるだけで周囲から笑い声が飛び交う中、悔しくて涙が出てきていた。
いじめ中心人物の「N」。
お前の名前だけは絶対忘れない。
体育の時間とプールの時間が大嫌いだった。
理由は太っていたからである。
運動すると身体の肉が揺れ、皆から笑われるのだ。
初恋もしたが太っていたから断られた。
私の机が荒らされていることもあった。
告白した女性の周りの人間が面白がってやっていたのだ。
「お前が女と付き合えるはずねえじゃん。死ね。」と言われたり散々だ。
あだ名はデブか、ある遊戯王カードに似たカード名だったと記憶してる。
結局小学時代も中学時代も何一つ面白いことはなかった。
卒業アルバムの寄せ書きページは真っ白。
家に帰れば両親は喧嘩。
母は自分を守るのに精一杯で私はいじめを受けてる現状を相談出来なかった。
唯一嫌なことを忘れられたのは家で兄とゲームをしていた時じゃなかろうか。
太ってることを恥ずかしいと思うようになっていた自分は、兄に学校でのことを相談出来なかった。そんな素振りを一ミリも見せていなかった。
あの時話していたら少しは気持ちが楽になっていただろうな。と今では思う。
兄は昔から良き理解者だったから、当時の自分は兄に心配させたくなかったのかも……とも。
続く……かも。
反生 @gomadangohd
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