第9話

 学校の時間が終わり、部活に入っていない俺は家へと直帰した。今日は妹の誕生日ということで誕生日パーティが行われる。


 そのことを昼食を一緒にした斎藤さんに話したのだがなんと参加したいと言われてしまった。

 

 もちろん妹とはなんの面識もない斎藤さんをパーティに招くというのは変だと判断した俺は断ろうとしたのだが…


 無理だった。


 何度も断った、何度も断ったのだ。でも彼女の意志はダイヤモンドよりも硬かった。それだけである。


 妹は中学二年生で剣道部に所属しており、全国大会に出場できるくらいの実力者らしい。俺がスポーツに興味がないからか知らないだけなのかもしれないが、剣道界隈では妹の名前をしらない人はいないのだとか。


 改めて考えたらあいつ凄いな。今度試合でも見に行ってみようかな。もちろん妹には内緒でだけど。だって妹の試合を見に行く兄だなんてただのブラコンではないか。


 ということで今家にいるのは俺だけである。パーティを開催するのだからもちろん飾り付けが必要だ。

 前々から密かに準備を進めておいたので、飾りたちは母さんたちの部屋に隠してある。


 本当は母さんと父さんと一緒に準備する約束だったんだけどな。まあ仕事が長引くのであれば仕方ないだろう。

 絶対にパーティの開催時間までには帰ってくると言っていたし、そこまでは自分一人で準備するしかあるまい。


 妹が返ってくるまで残りあと約一時間半とちょっと。


 さあ、やるかっ!


 と思った時、家のチャイムが鳴った。一体誰だろうか。母さんたちが帰ってきたのだろうか。いや、それなら連絡があるだろうし。


 じゃあ何かの荷物化と思ってインターフォン越しに尋ね人を見た。


「こんにちはー。涌井君!」


 斎藤さん?なんで斎藤さんがいるの?約束の時間は一時間後なんだけど?え、見間違えじゃないよね。


 俺は何度も目を擦って画面を見るもやはり映っているのは斎藤さんで間違いない。


「いるのは分かっているのですよ。涌井くん?入れてくださーい」


 なんだろう、言葉にできない圧を感じる。

 来てしまったのなら仕方ない。


「早かったな斎藤さん」


「はい、楽しみ過ぎて早く着きすぎちゃいました!確か飾り付けを一人でする予定だったんですよね」


「そうだけど」


「手伝います!」


「あ、うん。じゃあお言葉に甘えてお願いします」


 斎藤さんが来るのは予想外だったが、正直手伝ってもらえるのは大助かりである。俺は男だから女子が好きそうな飾りの付け方も分からなかったし女子、加えて男子モテが凄い斎藤さんがいてくれるのはありがたい。


「もちろん、任せてください」




 ーーーーーーーー


 ???視点


「もちろん、任せてください」


 涌井君の普段着姿、とてもかっこいいです。この人を私のものでデキたらどれだけ素敵なことでしょうか。

 想像するだけでも身震いしてしまいます。あなたはどう責任を取ってくれるというのですか?


 ちなみに責任の取り方は色々とあると思いますが私に対して責任を取る方法は一択しかございません。婚約です。


 しかしまだ婚約は早すぎるでしょう。だって涌井君はまだ私におちていませんからね。ほとんど時間の問題だと思いますが慎重にことを進めなければなりません。


 私の直感ですが、霧花透歌さんも私と同様彼のことが好きなのではないかと思っています。

 気のせいだと嬉しいのですが、残念ながら今まで私の直感が外れたことはありません。


 だから多少無理矢理ではありますが、涌井君との距離を縮めようと今日の昼。彼と接触し予想外ではありましたが妹さんの誕生日会にも参加させていただけるようになりました。


 この機会を利用して外堀を埋めれば私の勝利は確定します。実に愉快ですね。

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とりあえず責任取り続けていたら、いつの間にかクラスの美少女全員オトしていたらしい minachi.湊近 @kaerubo3452

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