夢日記:震える発砲スチロール
高黄森哉
夢日記
俺は、教室にいる。今日は卒業の日だ。高校生なのか、中学生なのか、小学生なのかは知らない。教室には、小学生時代の友達が沢山いるが、彼らは高校生の雰囲気がある。ただ、高校時代の彼らは知らないから、これは正しい像でないだろう。
卒業式はすでに終わっているらしい。どうして、そう思ったかは、廊下の閑散とした空気のためだ。この渡り廊下には花道があるが、人はまばらにしかいない。垂れこめた空は鈍い灰色である。ここは二回目の高校の校舎だ。
次の場面で、俺と友達は体育館にいた。サッカー好きの友達。彼は夢の中でも、昔と同じ距離感でいてくれるようだ。それが、今のすさんだ心に優しかった。あいつは今も俺は無視しないだろうか。
暗い、体育館の入り口にある廊下だ。リノリウムがひどく病的に、地面に横たわっている。景色は、やや緑ががっている。夜の病院で、非常階段の看板の近くにいくと、こんな具合だ。
俺と友達は、粉々になった発砲スチロールを眺めていた。それは、ぴくぴくと蠢いている。無機物がなぜ動いているのかわからない。ただ、ひたすらに不気味だ。まるで、肉片が独立して生きている冒涜さだ。
この発泡スチロールが、もともとはなんだったのか。二次元的な、人型の看板だったような気がする。非常口のポーズをするそれは、夢の記憶では後ろ向きのため、誰の看板だったかまではわからない。
漠然とだが、それは知り合いだったような気がする。すごく活発で、浅黒い肌の男だ。いくつか候補があるが、少しずつ合致しない。わかるのは、俺が最初に予測する人物と、夢のそれは、確実に別だということのみだ。
俺達は予感がした。なにやら、良くないことが起ころうとしていると。どうやらそれは、無機物が生を持つこと、らしかった。それがどう良くないのか、まったく理解できないが、不穏な空気は漂っている。
その時、世界が揺れた。地震だ、と思い耐えているが、なかなか揺れが止まらない。揺れる周期は細かく、まるで機械の振動みたいだ。どうも、おかしい。これは異常な地震だ。
〇
というところで、夢は終わっている。非常にくだらない夢だった。久しぶりに見た眺めの夢が、こんなのだと、なんだか凹む。
蠢く発泡スチロールが、なにを意味するのか未だに解釈が出来ない。ヒントとなりそうなのは、昼間の残渣だが身に覚えがない。精神状態も反映されているわけではなさそうだ。これはきっと、不規則な合成が作り上げた悪夢なのだろう。
最後の地震は、おそらく無機物が生を持つ現象が地面に伝わったのだと、推測できる。だが、それが一体、なにを伝えんとしているかは、難しい。
夢の中で俺は、何かが不穏なことが起ころうとしていることに、始終、期待していた。それが、鍵となりそうな予感がするが、今の俺には、開けられない。
夢日記:震える発砲スチロール 高黄森哉 @kamikawa2001
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます