幸せのお裾分け

「伊織さん、今いいですか?」


ある日、俺の家の前にて、インターホン越しにそう言うマリーさん。


「あ、はい。いいですよ」


俺はそう言った後、彼女を家の中に入れた。


「アレ?それは.....」

「牛肉とキャベツのトマト煮込みです」


めっちゃオシャレ!!

てか、美味しそう!!


「伊織さんにはお世話になっているので、お裾分けしようと思って.....」

「えぇ!?」


俺に.....お裾分け!?


「い、いいんですか?」

「もちろん!!いいですよ」


..........マリーさんが優しいことは知っていたけど、ここまで優しかったとは。


「そ、それじゃあ、ありがたく頂きます!!」


そう言った後、タッパー入りのトマト煮込みを手に取る俺。


「しっかし.......ここまでオシャレな物が作れるなんて、マリーさんは凄いですね」

「フフッ、ありがとうございます」


俺の言葉に対し、そう答えるマリーさん。


「この料理は、私が生きていた頃に食べていた料理なんです」

「え!?そうなんですか!?」


あ、そっか。

こっちの世界に来る前のマリーさんは、数百年前のフランス王妃だったから、こういうオシャレな物を食べていてもおかしくはない....か。


「でも、それを再現できるマリーさんは凄いですね」

「まぁ、ネット様々ですから」


実は、マリーさんにスマホを支給したところ、あっという間にネット社会に適応していた。

マリーさん曰く.....主に、料理のレシピ探しのために使っているらしい。


「あ!!一応レンチンしてから食べてくださいね!!」


思い出したかのように、そう言うマリーさん。

それを聞いた俺は、何故だかよく分からないけど、何故か微笑んだ後


「分かりました」


と言った。

そして、マリーさんは自分の部屋へと帰っていき.......俺は、タッパーの中に入ってる料理を、トマト煮込みを食べるのだった。


「美味ぁ.......」


トマト煮込みの美味しさに対し、思わず、頬が緩む俺。

だって、めちゃ美味いんだもん。


「マリーさん....凄いなぁ」


元々、王族という立場上、料理なんてしたことがないはずなのに.....こんなにも美味しい料理を作れるなんて、マリーさんは本当に凄いなぁ。

まぁ、史実では畑的なやつも作っていたっぽいし、優しい人なのは間違いないな。


「なのに、どうして悪人扱いされてたんだ....?」


.......歴史って、本当に無情だな。

そう思いながら、俺はトマト煮込みをもう一口食べるのだった。


「.....今度、俺の作った料理でもお裾分けしようかな?」

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メゾン・ド・偉人〜俺が管理人を務めるマンションに偉人が集まるんだが〜 @marumarumarumori

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