いつか始まる物語のプロローグ

あきこ

いつか始まる物語のプロローグ

 私は神の国と言われているこの帝国の第一皇女アリサ。


 う~ん、元々の地球人の見た目で言うと8歳か9歳ぐらいかしら?

 実際にヒトの時間の流れで計算すると10歳ね。


 18歳ぐらいまでの成長速度は、地球人とあまり変わらないの。

 こちらの基準で言うと、第5成長期を終えたところよ。


 大人たちは皆、この国の第一皇女である私をとても愛してくれているわ。わたしもやさしいみんなが大好きよ。


 私に関して、大人たちが噂話しをするときはみんな目を細めて嬉しそうな顔になるの。

 そして、必ず空のの話になるわ。


 そう、それはもう伝説のように語られるのよ。


 あの日、突然空がに輝いた時は驚いて皆が屋敷の外に出て空を見上げたと……


 空が虹色に輝いた理由はすぐに判明したらしい。


 何事かと慌てる城の高官達をよそに、お父様の大親友が花束を抱えて城にはせ参じて「おめでとう」と声をあげたという。


「こいつ、もし子供が出来たら嬉しくて空を虹色にしてしまうかもしれないって昔言ってたんだよな。はは、まさか本当に虹色にするとは思わなかったぜ」


 お父さまの親友が言ったその言葉を聞き、皆状況を理解して世界がおまつり騒ぎになった……

 という話だ。



 こんな風に、世界中の人々から生を受けたことを喜んでもらえた私は本当に幸せ者だと思う。


 実際、私はとても恵まれている。


 私のお父さまは神聖アガルタ大帝国の皇帝だ。

 お父さまは、始祖神と呼ばれているこの世界を作った創造神の血を受け継いでいる。それはつまり現在の神という存在だそうだ。

 そしてお母さまはそんな父の唯一の妻で皇后である。


 元々、お父様の元には100人の宮巫女と呼ばれる側室がいて、お母さまもその巫女のひとりだったようだが、いろいろあった後、現在の皇后のとなったらしい。


 この帝国では、神の血を引く直系のうち、神の力を受け継ぐ者の宮には宮巫女が配属される。

 そして皇太子には、成人の儀式の前後で100人の宮巫女が側室として献上されるという風習があるのだ。


 最初、おじい様……つまりお母さまのお父様は、お母さまを巫女として皇太子の宮に上げるつもりはさらさらなかったらしい。

 アガルタで5本の指に入る名門の惣領姫であったお母さまを、皇太子殿下が相手とは言え、何人もの側室の一人とするつもりはなかったのだ。

 一人娘だし家門を継がせるつもりだったと、おじい様は今もよく話している。


 でも、お母さま命だったお父様は、いくら大臣たちがお母さまの名前の無い宮巫女の名簿を揃えて持って来ても、「巫女はまだ揃っていないようだ」と言い続け、儀式をしようとしなかったという。


 そんな状況が長く続いた後、やっとお父様がお母さまを口説き落とし、おじいさまの承諾を得てお母さまを自分の宮に上げることが出来たのだと侍女たちから教えてもらった。


 そう、お父さまとお母さまは本当に大恋愛だったらしいのだ。


 でも、ふたりが今、幸せそうにこうやって並んでいられるようになるまでは……本当に色々とあったと聞く。


 神の国は、世界が造られて以来最大の危機を迎えていて、世界を滅亡させる危険が伴う程に荒れに荒れた時代だったらしい。

 それで、お父様とお母さまももう二度と会えないようなそんな状況にもなって……ほんとうに長い長い間、辛い事が沢山あったみたい。


 侍女たちが私にこの話をするときも、

「だめです、涙が出るので今は話せません。皇女がもう少し大人になったら話しましょう」

 と言われ、今は何も話してくれない。


 ただ、ふたりは……

 何もかもを超えた愛で世界を救い、そして結ばれたのだと言う。


 実際に世界が滅ぶ危機があったのは私が生まれるほんの少し前の出来事で、今はまだそれを聞く時期ではないのかもしれない。


 でも、今は、みんなそんな大変な時代を乗り越えて、笑顔で幸せに暮らせている。

 これはきっと神である私のお父様とお母さまのおかげだと思うわ!


 私はいつかこの二人のすべてを超えた大恋愛の物語をちゃんと聞かせて貰おうと思っている。

 そしてふたりの伝記を書こうと思っているの。


 今はまだ、ちゃんとお話してもらえないから、もう少し……

 私の背がお母さまと変わらいぐらいになった時に聞かせて貰おう。



 そうそう、今日はお城中がとてもバタバタしているの。


 ひっきりなしにお客さんが大きな贈り物をもって城にやってきてお父様とお母さまに謁見しているし、城の前にも神の子達が集まって祈ったり、贈り物を置いていったりしているのよ。


 おかげで朝から私は放置されている状態なの。


 でもまあ、仕方ないわね。

 だって、昨日の夜、空の色が……にかがやいたんですもの。


 お母さまのお腹の中にいるのは、多分弟じゃないかしら?

 はやく会いたいな。

 そして、季節ごとにいろんなのお花が咲くこのお庭で仲良く遊びたい。

 

 ふふ、とっても楽しみだわ。



「いつか始まる物語のプロローグ」 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いつか始まる物語のプロローグ あきこ @Akiko_world

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ