歴史の案内人がミステリーチックに御話をしてくれる。歴史、それは、平和なことばかりじゃないんですね。日本に歴史あり、自分にも歴史あり、それをなんの苦労もなく享受していることを考えさせられます。
大河のように流れながら、土に染み入り、積み重ねられたその歴史。そこからかすかに立ちのぼる声をとらえて、250年のながい時を超えた悲恋という形で描きだした物語です。舞台となる土地のうえに立って、川のせせらぎに耳をすましているような、そんな気分にさせてくれます……。
語り口が上手で、まるで読者が「そこ」に立っているかのような錯覚を覚えます。そわっ……、と忍び寄ってくるようなホラーです。面白いですよ!ぜひ、ご一読を!
きっと、大河ドラマの導入になりますよ、この話!名も無き英雄たちと、後世まで伝わる史跡の数々。そこに息づいた人々の思い、また、遠き地より注がれる諦めという名の眼差し。その全てが、一点に交わる不思議な時空の訪れ。詩的であり伝奇であり何よりも、愛の讃歌である。この素敵な作品に感謝と賛辞を!