第3話 風のように

次の日の朝のこと。

赤城や林たちは三國の訃報を受けた。

担任の先生は残念そうにいう。

「残念ながら、三國くんは亡くなってしまいましたが皆さんが共に過ごしてきた3年間に変わりはありません。」

クラスの誰もが暗い気分になった。


その後、三國と親しかったクラスメイトが葬式に招待された。

その中にはなぜか赤城も含まれている。母親が生徒の仲についてしる機会がどこにあったのだろうか。三國の性格上親に学校の話をするタイプではない。


葬儀の日は土曜日に寺院で行われる予定だった。土曜日は部活が入っている人もおり、野球部など学校が力を入れている部活の生徒はいけなかった。

結局葬儀に参加した生徒は4人。赤城と、三國と仲が良かった大平、いつもふざけ合っていた黒岩、そして林だ。

読者の皆さんはこう思ったに違いない。

ー林は野球部ではなかったか。野球部なのになぜいるのか。

これは赤城や大平も抱いた疑問だった。


本堂の前で待っているとき大平は林に聞いた。

「お前、野球部は?」

「委員会という名目で休んだ。三國を放っておけなくてね。でもちゃんと委員会の仕事もあったんだ。」

「そうなん。来ないと思ってたわ。」

「俺をなんだと思ってるんだ。」


林はニヤリとした表情で赤城の方を見た。

「赤城はなんでここに?」

「呼ばれたから。」

「三國とはどんな関係で?」

「…。」

赤城は何も答えなかった。答える必要なんてないのだから。


数分話して話がひと段落つきそうな時、見たことのない黒いスーツを着た男性がきた。

「林さん、大平さん、黒岩さんと…赤城さんですね」

「あ、まあ、そうですけど」

林がこたえる。大平は興味がなさそうに下を向いていた。

「お話があるのでついてきてもらえますか?」

そういって男性は歩き始めた。

どんどん人気のないところへ向かう。本堂から離れた別の建物に男性は入っていった。最終的に誰もいない畳の部屋に通された。

「少々お待ちください。」

そう言って4人に水を渡し、男性は障子を閉めて去っていった。

大平はその不気味さに、震えたような声を出した。

「あのおっさん、なんでこんなところに…」

「なんか変なこと起きそうだよな」

黒岩もそわそわしていた。

林も水を勢いよく飲み、もうあと僅かになっていた。

「林、その水に毒入っているかもよ」

黒岩は真面目な声で言った。

「…まあ、もう飲んだあとだ。」

林はいつもよりも顔が青かった。急に怖くなったのかもしれない。

沈黙が漂う。誰も話さない。

10分も経った時だろうか。やっと林が口を開いた。

「赤城は怖くないのか?」

「え?」

黒岩も乗っかるようにいった。

「そうだよ、いつも通りっていうか、怯えてないっていうか」

赤城は即答した。

「何も怖くない。」

他の3人には驚いた。


そのとき、障子が開く音がした。

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Time leap 〜予想できない悲劇〜 ばたこ @rora89

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