第9話

「エリスちゃんは平民出身なんだ!珍しいね」


エールはお弁当箱を広げながら雑談をした。ちなみにこのゲームでは魔法というものが存在するが、使えるのは貴族だけとなっている。


「私のお母さんが元々貴族だったみたいで。でも父が平民でしたので」

「そうか。それではこの学校では生きずらいな。俺に出来ることがあったら言えよ」

「え、エリオット様。恐れ多きお言葉です」


そう言って、エリスから食い気味に頭を下げられた。そんな状態を見て、エールはどうにかしろというように、顎で俺に指示を送る。


俺にどうしろと言うんだ。俺は攻略される立場だったし、いつもキャス達が何とかしてくれたじゃないか。今度は俺が彼女を救う立場なのか?恋愛知識もない俺が?


とりあえず、彼女にそんな態度を取られ続けていると、俺げ脅しているようにしかみえない。友達として接して欲しい。身分は違えど同じ年齢なのだから。


「頭を下げてくれ、エリス。俺たちは友達なんだからありがとうでいいんだ」

「そうそう。エリオットの言う通りだよ。私たちには敬語は使わないでねー?これは命令だよ。友達命令ってやつ?」


俺に完全に便乗したエールがそういうとエリスは少し困った顔を浮かべた。しかしすぐに俺たちが本心から言っていることが伝わったのか、砕けた笑顔に変わった。


「ありがとう、エリス。エリオット。私と友達になってくれて」


彼女は満面の笑みを俺たちに振りまいた。これが本来の彼女なのだろう。教室ではほかの貴族のヤツらがいるから、変なことは出来ないが、俺たちだけでいる時は変に気をはらないで欲しい。


この後、3人でゆっくりと会話をしてから教室へと戻った。


「ねぇ、エリオット?君は女の子の扱いになれているのかな?」


そんなことを聞いてくるエール。意味のわからない質問に俺は多分、素っ頓狂な顔をして答えていたことだろう。


「恋愛経験は一切ない」

「ほんとかなぁー、って疑ってみたり。 まぁ君がそう言うならそうなんだろうけどね」

「なんでそう思ったんだ?」

「んー、秘密かな」


そう言って、彼女はまた体を前に向けて次の授業の準備を始めた。そりゃ、エリオットの体だったら、現実の世界ならモテるんだろうなぁ、そんなことを思いながら準備をするエリスを横目に机に突っ伏した。

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乙女ゲームの主要キャラなのに人気ランキング低い奴に転生したけどそれっぽいセリフ言ってるだけでなんかモテる話 伊良(いら) @hirototo

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