第8話

俺はエールの後ろから彼女が不審者の如くエリスに近づいていく所を見ていた。誰にも見られていないかを常に確認して恐る恐る話しかけた。


「あ、あのエリスちゃーん?」


そんな不審な行動の一部始終を見ていたエリスはキョドりながら返答した。


「え、あ、はい?ごめんなさい!すぐにどきますので」


そう言って彼女は赤色の可愛いお弁当を片付け始めた。その時にエールの顔を一切見ない。


そしてエールもまたコミ障の類なのでなんと声をかけていいかわからず、俺の方を見て助けてくれとアイコンタクトを送る。漫画だったらダラダラ汗が流れていることだろう。


俺はエールの補助に入ることとした。俺がエールの横に立つと影が動いたのが見えたのか、俺の方を見た。


「エリスさん?この子はエリスさんとご飯を食べたいと思っていますよ?」

「え?へ、平民の私とですか?二人でイチャイチャするためにではなくですか?」


そんなふうに言うエリス。横のエールをみたらとても怪訝な表情を浮かべていた。


早く否定しろとでも言うように口を引きつらせていた。さっきまでのデレはなんだったんだろうかと過去の幻影を振り返った。


「俺たちは知り合いで、恋人とかそういう訳じゃ」

「し、り、あ、い?」


俺が否定すると、俺の言葉に不満を覚えたエールがローファーで俺の足をふむ。いや踏みにじる。その痛みを感じながら、さっきの言葉の一部を改変する。


「いやいや、友達です」

「そうよね?」

「はい」


そんな光景を見ていたエリスは口元を隠しながらクスリと笑った。それを見てエールが「よくやったじゃない?」とでも言うように俺に笑いかけた。


「でさ、エリスちゃん。私たちと一緒にご飯食べない?変なことはしないから」

「また誤解が生まれるようなことを。この子はただご飯を食べたいだけと思うよ。ほんとに。一人よりもみんなで食べた方がいいんじゃない?」


俺がそういうとエリスは嬉しそうに笑ってお弁当を端において、カバンの中からシートを取り出した。そして遠慮がちに俺たちの方を向いて言った。


「お母さんがこれで友達と食べなさいってくれて……いいですか?」

「ありがとう、エリスちゃんー!」


エールは俺と一緒にいた時なんかに比べられないくらいに笑顔だった。恐らくだが、彼女も友達がいない。同棲の友達が出来て嬉しいのだろう。


「じゃあ、俺は一人で食べるよ。女の子ふたりで盛り上がる話もあると思うしさ」

「何を言ってるの?エリオットも一緒に食べるに決まってるじゃない?」


そう言ってエールは自分の横の空間を軽く叩いた。エリスも小さく頷いてくれた。俺はお言葉に甘えて一緒に食べることになった。


他の4人のイケメンキャラを差し置いて、メインヒロインとご飯をすることになったのだ。









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