第7話
何とか午前の授業を乗り切って、お昼休みになった。エールは彼女の性格に似合わないかわいらしいお弁当を持ってきている。俺はなんと言ったらいいのだろう。日本でいうところのおせち料理である。
美味しいことに違わないのだが、ぜいたくすぎてお昼に食べようという気にはなれないし、人前で見せびらかすのもどこか気が引ける。そのために屋上へと避難することにした。
「どこかに行くの?」
「あぁ、ちょっと気分を変えに屋上にでも」
「そう。便所飯でもしに行くのかと」
「その手があったか、ありがとうな、教えてくれて。じゃあ、またあとで」
俺がエールの皮肉を受け流していると、彼女は少し焦った顔になって先ほどの言葉を取り消した。
「ちょっと、そんな真に受けないでよ。私が嫌な奴みたいになるじゃない。さっきのは冗談よ。ごめんなさい」
彼女は反省したのだろうか、少しうつむき加減になっている。こんな感じで接しているが根は優しいのかもしれない。
俺が一度広げたお弁当を包んで立ち上がった時に彼女もお弁当箱を包んで少し遠慮気味に提案した。
「屋上に行くなら私もついて行こうかなぁ、なんて言ったりしてみたり……」
「ん?いいぞ。みんなで食べた方が美味しいしな」
「……そ。じゃあ、ついてく」
そう言ってエールも立ち上がった。二人して屋上へと向かった。そこには、このタイミングであっては行けない人がいたのだった。
◆
「あ、エリオット。見て、あれってエリスちゃんじゃない?」
「ほんとだ。一人で食べてるんだな。キャスとかと食べてないのか」
そうか、まだキャスはエリスが一人で食べていることを知らないのか。それも女子からハブられてここで食べているということも。
それより女子からハブられていると言う事実を知らないエールはどうなっているんだ。
女子の友達がいるんだろうかと、エールの方を見たがキョトンとした顔で俺の方を見返してきたので考えるのをやめた。
「ねぇ、エリオット。エリスも一緒に食べてもいいかな」
「ご飯は大人数で食べた方が美味しいしな」
「ありがとう。でさ、私。初対面の人と話すの得意じゃないから付いてきて」
そう言って彼女は俺の手を握ってエリスの元へと歩き始めた。彼女は無意識にしている行動なのかもしれないが、俺はめっちゃ意識している。
だって女の子と手を繋いでいるんだもん。
「あのー、エールさんや。手……」
「あっ、ごめん。嫌だった?」
彼女は俺に言われて反射的に手を離す。
「嫌というか、意識してしまう」
「あ、うん。そうだよね」
「私もちょっとだけ恥ずかしいかも……」
そんな会話をしながら、俺たちはエリスの方に歩いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます