第58話 交易街 ハイネル



●クロプシュトック侯爵領  国境境の交易街 ハイネル


ディーブル伯爵領を経由しクロプシュトック侯爵への上納品が納品される関所の交易街「ハイネル」この町はクロプシュトック侯爵の甥であるシュルツ男爵が交易責任者として詰める街である


実際にクロプシュトック侯爵へ納品されるまでに上納品は経由してくる各貴族達に抜き取られ実際、この街に到着するのは3分の1に満たない


では、不足分はどうするのか?


簡単だ、抜き取られる分を水増しして領民から搾取するのだ...つまりシェーンブルン伯爵領の領民はじめベストパーレ男爵領や各地の領民は本来上納する以上の産物を搾取されているのだ...


当然だが、このハイネルにおいても、シュルツ男爵の懐にも上納品の一部が入る・・・・はずなのだが・・・


「ふざけるな!!」パリッン!!


豪華なドレスコードに身を包み、薄いキャミソールの様な服装を着せられ首輪を突かれて鎖につながれた女性を侍らした、明らかな肥満の男がテーブルの上に有ったワイングラスを報告しに来た騎士に向って投げつける


「ひっ!お、お許しを・・・・シュルツ男爵様」


「落ち着けだぁぁ!これが落ち着ける訳無かろう!!何故ベストパーレやシェーンブルンからの上納品が送られて来てない!!」


「そ、それが我々にもさっぱり・・・・」


「この無能共がぁぁぁファイアーボール!!」


シェーンブルン男爵が指先に炎の初級魔法を発現させると、土下座して許しを乞う騎士の頭部に向って放つ


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」「「「ひぃぃぃぃ」」」


髪の毛が炎に包れ顔面にまで炎が纏わりつきリビングでのたうち回る騎士・・・・その様子を見て恐怖に怯える女性達


「俺は1日5食の食い物が少ないとイライラが収まらないんだ・・・・」


テーブルの上のワインを手に取り立ち上がると、炎をなんとか消そうと転げまわる騎士の元へと歩み寄りゆっくりとワインを騎士の燃える頭へとかけて行く


「ぎゃぁぁぁぁぁ」


ワインのアルコールで更に炎の勢いを増し、騎士は眼球を熱で破裂させた上酸欠で口から泡を吹き出し、そのまま絶命した


パンパン♪


「男爵様、お呼びで!?」


手を叩きドアの外で待機していた他の騎士を呼び付け


「そのゴミを片付けろ・・・無能はゴミだ・・・それより他の寄家からの上納品が滞っている理由を早急に調べて報告しろ」


「はっ!!」


傅く騎士を見下し・・・


「今日の4度目の食事までに報告しろ、でないと・・・解るな?」


「は、はい・・・必ずや・・・」


騎士は隣で頭部が黒く炭になった同僚を横目に見てゴクリと唾を飲み込むと、静かに目を閉じ深く頭を下げた



〇クロプシュトック侯爵領  国境境の交易街 ハイネル正面ゲート付近


「シェーンブルンからの荷物か?」


「へい、伯爵様からの上納品です・・・あ、こちらは騎士様に・・・」


俺は布に包んだ牛の干し肉の束を守衛の騎士へと手渡すと・・・


「ま、まぁこれはお前らの安全を守ってる我等への労いとして受け取っておく」


そう言いながら他の守衛騎士の眼を気にしながら懐にしまい込む


「ん?そこの女共フードを取って見せよ」


守衛騎士は槍の先で、荷馬車で俺の横に座るパンドラとオリハを指すとクイクイと槍を動かし顔を見せる様に促す


「あ、いえ・・・この女は私の妻と妹でして・・・騎士様にお目にかける程の・・」


「俺はフードを取れと言っている・・・これも街を守る守衛騎士の役割だ!」


俺は横目で合図しパンドラとオリハにフードを取る様に合図する・・・


「なんだ!?泥だらけでは無いか!小汚い・・・浮浪者でももう少しましだぞ!」


パンドラもオリハも顔中が泥とも糞ともつかない程汚れており、肌もくすんで目元も長い髪の毛で見えなくなっていた


「畑仕事と家畜の世話ばかりで・・・どうかこれで、お許しを・・・」


俺はもう一つ包を騎士に手渡し深々と頭を下げた・・・


「ふん!まぁ良かろう・・・今度来るときはもう少し清潔な格好をさせて来る事だな!ちっ・・・通って良し!!」


「へい・・お勤めご苦労様で御座います・・騎士様」


俺たちは騎士から入門の許可を得、馬車を走らせ街の中へと入って行った


馬車は大通りを脇に逸れ、下民街との境へと進み少し大きめの路地に停止する


「・・・・お前等、もう良いぞ」


「フフフ、ロン様ったら~平民の演技が上手でございました♡フフフ」


「パンドラの予知で事前に準備しておいて良かったよ」


パンドラとオリハは、俺の左手で作り出した水の玉で顔を洗い汚れを落としてスッキリした所で先ほどの門の所でのやり取りを思い出し話だした


「まぁ毎回どこも同じさ、お前らの様な美しい女は誰でも抱きたいさ・・ました奪っても文句を言わない相手となれば遠慮する奴なんか居ないさ」


「まぁ♪ではロン様も我等よりも興味を惹かれる女性が現れたら、有無を言わさず奪い取りますか?」


俺の頭の中に、初恋の女性の笑顔が思い浮かんだが、直ぐに牢獄の鉄格子越しに汚物を見る様な目を向け唾を吐きつけた時の表情が塗りつぶす


「フフフ・・・そう、そうだな・・・だがお前等以上に俺の愛情を注ぐに足る女が現れるかな?」


「主様、オリハは主様だけを愛してるよ!」


「フフフ、オリハったら~でも、ロン様は我らの唯一愛を捧げる精霊王ですから私も想いは同じよ♡」


そう言いながらも俺にしなだれて来る二人にそっと口付けする


「ではこの隙間に我等の宿を設けるか・・・オリハ頼んだぞ」


「御意」


オリハは馬車から降り荷台の背後で地面に、手を翳すと地面から土が盛り上がり石作りの家が生成されて行く


「上出来だ・・・オリハ」


「はっ!勿体なきお言葉」


「では、ここを拠点にこの町を落とすとしよう・・・・クククいよいよ帝国の大貴族の喉元に手をかける時が来たぞ」



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世界に否定され全て奪われた元貴族の令息が、悪霊達に身体を差出し悪霊の王となって世界に復讐する nayaminotake @nayaminotake

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