最終話 幼馴染と想いの結末

「大切な話があるんだ」


伝えようかずっと悩んでいた思い。

今の関係が壊れてしまうかもしれなくて、怖くてずっと踏み出せなかった一歩だった。

でも今は違う。

もし想いが成就しなくてもきっと七海とは今までと同じく気軽に笑い合える、そんな関係でいられると思うから。


「どんなことでも真剣に聞くから……」


七海の目はこれ以上無いほど真剣だ。

真剣に和弘の話を聞いて向き合おうとしてくれている。

それが友達とか幼馴染として好きだからなのか、恋愛対象として好きだからなのかは和弘には判断がつかなかった。


「俺は……」


「うん………」


一つ大きく息を吸う。

こんなに緊張したことなんて人生で一度だってない。

でも伝えないといけない。

それが自分の想いをまっすぐにぶつけてきてくれた七海に自分ができる最大限の誠意だから。


「俺は…………七海のことが好きだよ」


「………………………ふぇ?」


七海は一瞬ポカンとなるとみるみる顔が赤らんでいく。

そしてカチンと固まったかと思うとぎこちなく頷いた。


「あ、ああ!幼馴染としてだよね!」


「ううん。七海のことが一人の女の子として大好きだよ」


「あ……ぅ……」


七海は顔をさっきよりも赤くして顔をうつむけ黙り込んでしまう。

耳や首元まで赤くなってしまっている。

それは照れから来るのかはたまた恥ずかしさから来るものなのかは和弘をもってしてもわからない。

でも一度伝えたなら最後まで伝えきるだけだ。

悔いが残らないように。


「七海と一緒にいるのが当たり前でずっと気付けなかった。でも……やっと気づけたんだ。俺は七海が好きだって」


ドラマのワンシーンのように夜景が綺麗なわけでもなければ何か特別なプレゼントを用意できていたわけではない。

それでも今の自分にできる精一杯の等身大の告白だった。


「フッてくれてもいい。突っぱねてもいい。だけど……これだけは伝えたかった」


七海は顔をうつむけたまま何も言葉を発さない。

和弘も同じように何も言うことができなかった。

自分の告白がどういう結末を迎えるのか静かに待つことしかできない。

何分が経っただろうか、七海は突然泣き始める。


「グスッ……うわーん……」


「な、七海!?ご、ごめん!迷惑だっ──わっ!?」


言葉を紡ぎきる前に七海が抱きついてくる。

胸に顔をうずめ声を上げて泣いていた。

その腕は絶対に離さないと主張するかのように強く強く和弘を抱きしめている。


「私も……!私も大好き……!いつも優しくて……かっこよくて……一緒にいると安心する和弘のことが……大好きです……!」


「……!!」


「よかった……和弘は私のことなんてなんとも思ってないんじゃないかって……ずっと不安で……よかったよぅ……」


それは七海の本音。

ずっと幼馴染として一緒にいたことで先に進めないんじゃないか、自分のことなんてなんとも思われてないんじゃないかという不安を吹き飛ばし、秘めた想いが報われた瞬間だった。

それを知った和弘は優しく泣きじゃくる七海を抱きしめ返した。


「ごめん、不安にさせちゃって」


「本当だよぉ……いつも和弘は誰にでも優しくて……私もその内の一人でしかないんじゃないかって……ずっと不安だったんだからぁ……!」


「七海はいつでも俺の特別だよ。想いを自覚する前でもこれだけは自信を持って言えるよ」


いつまでそうしていただろうか、七海が泣き止むまで2人はずっと抱きしめ合っていた。

だが泣き止んだはずなのに七海は顔を上げようとしない。


「どうしたの?」


「今は離したくない……もっと和弘とくっついていたいんだもん……」


「あはは、そっか。じゃあ俺も」


そう言って和弘は七海を抱きしめる力を少しだけ強める。

今まで幼馴染としてのスキンシップは数多くあれど恋人としてのスキンシップは手探り状態で七海の体温がとても心地よかった。


「あったかいね……」


「うん、あったかい……」


和弘と七海の目が自然と合う。

そしてニコリと笑い合って唇が重なりあった。


「大好きだよ、七海」


「私だって負けてないもん。和弘のことが世界で一番大好きなんだから」


そう言ってまた自然と笑みが溢れるのだった。



そして、実はマイクが切れていなくて全てを知った視聴者たちは静かに祝いの言葉と共に大量の赤スパを投げるのだった──



fin




───────────────

あとがき

https://kakuyomu.jp/users/brioche/news/16818093082659133028

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幼馴染とゲーム実況してたら初々しいカップルチャンネルだと思われてバズった 砂乃一希 @brioche

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