第9話 幼馴染と心からの願い
七海のことが好きだ。
そう気づいてから七海と話すのが余計に難しくなってしまった。
七海のことを考えるだけで心臓がきゅっとなり顔が熱くなる。
今思えばずっと昔から七海のことが好きだったのかもしれない。
「どうしたの?カズ?やっぱり様子変じゃない?みんなも心配してるよ?」
そう言われて和弘はハッとなる。
今は配信中。
余計なことを考えている場合ではなかった。
コメント欄を見れば心配する声も多数上がってしまっていた。
『大丈夫?あんまり無理しなくていいからね?』
『今日ナナミンとの距離感も少し遠いような……』
『何かあった?』
「あ、あはは。大丈夫だよ。みなさんもご心配かけてすみません。体調とか全然問題ないので!」
和弘は笑顔で首を横に振るが依然として七海は心配そうな表情を浮かべている。
なんとかごまかさなければと思った和弘はコントローラーを握った。
「ほら!気を取り直して行こう!」
「え?う、うん……」
七海も配信中にこれ以上聞き出すことはできないと思ったのかつられてコントローラーを持つ。
そして配信へと戻っていくのだった──
◇◆◇
「ありがとうございました!」
「今日も来てくれてありがとね!次の配信は週末だよ!それじゃあまたね!」
配信をいつも通り終わらせる。
そして七海は話しかけた。
「ねぇ……やっぱり最近の和弘は何か変だよ……」
「ごめん。ただ注意力が散漫だっただけなんだ。別に体調が悪いとかそういうわけじゃないから」
「違う!そういうことが言いたいんじゃないの!」
七海が珍しく声を荒げたことに和弘は驚く。
いつも温厚で笑顔な七海がこんなふうに声をあげたのはいつぶりだろう。
「私は……私はそんなに頼りない……?」
七海の頬を一筋の涙が流れる。
その涙は止まることなく次々と流れていった。
「私は……もし和弘が悩んでるなら、苦しい思いをしてるなら寄り添いたい……!2人一緒なら……どんなに苦しいことでも乗り越えられるって……昔一緒に笑いあったじゃん……!」
それは七海の心からの願い。
ただ和弘と一緒にいたい、助け合いたいというささやかだけど叶えるのが難しい願い。
「私に話したくないことなのかもしれない……!でも!もしそうじゃないんだったら話してほしいの……!私はいつでも和弘の味方でありたいから……!」
その言葉は和弘の言葉に響く。
なによりもまっすぐな七海の思いは和弘の悩みなんてなかったかのように和弘の心に届いたのだった。
「ごめん、七海。七海にそんな顔をさせるつもりじゃなかった」
「グスッ……うぅ……」
和弘はハンカチを取り出して優しく七海の涙を拭いてあげる。
しばらくすると七海が泣き止み落ち着いてきた。
「本当にごめんよ。七海」
「グスッ……話してくれるの……?」
「うん、話すよ。嘘偽りなく全部話す。だから七海に聞いてほしい」
そこで和弘は言葉を切る。
そして七海の目を正面から見つめた。
「大切な話があるんだ」
───────────────────
次が最終話になります。
あと少しだけお付き合いくださいませ……!
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