第8話 幼馴染と自分の想い
(俺がどうしたいのか。七海とどうなりたいのか、か……)
和弘はずっと親友からの言葉について考えていた。
いつも通り仲良く遊んだり一緒にご飯を食べたりしたい。
そう思っているはずなのにどこか違和感を感じてしまう。
まるで自分が本当に望んでいるのはそういうことではないと言わんばかりに。
「どうしたの和弘?元気ないみたいだけど……」
「い、いや。なんでもないよ」
今は2人とも七海の家でダラダラと過ごしていた。
ぼーっとしていた和弘に気づいたのか読んでいた少女漫画から顔を上げ質問する。
その顔は少し赤らんでいたが。
「そう?でもさっきからずっと何か考えてない?」
「あ、あはは……ちょっとね。でも大したことじゃないから」
本当は和弘にとっては大したことなのだが七海に心配をかけたくないしまさか本人に面と向かって君のことをどう思っていてどうなりたいのかを考えている、とは流石に言いづらい。
「……そっか。まあ言えるようになったらいつでも言ってね」
「ありがとう。そのときは遠慮なく頼らせてもらうよ」
「ふふ、うん。そうしてくれると嬉しいな。あと今から一緒にゲームしよう!」
「えっと……なんでそうなるの?」
どうやったらそこからゲームになったのか和弘はわからなかった。
だが七海はいい笑顔を浮かべている。
「何か困ったことがあるならゲームだよ!一緒にゲームすればきっと悩み事も飛んでいくよ〜!」
「……はは、そうだね。じゃあ一緒にやらせてもらうよ」
七海らしい気遣いに笑みがこぼれ言われた通りコントローラーを握る。
今日は前の配信でやりそこねた赤と緑の帽子を被ったおじさんを操作していくゲームだ。
「最短タイムアタックしよ!今日中に1−1からラスボス倒しちゃお!」
「流石にそれは難しいんじゃ……まあできるだけついていくよ」
早速2人はゲームを始める。
このゲームは複数人でやると大抵お互いの足を引っ張ることが多いゲームなのだが和弘たちは息ぴったりなのでスルスル進んでいく。
七海がコースを知り尽くしているので裏ゴールを使いまくってショートカットしていた。
「このペースなら意外といけるかもしれないね」
「ね!まだノーミスだけどここまでこれたんだもん!私たちなら絶対行けるよ!」
2人は更に集中してクリアしていく。
徐々に上がっていくペースに和弘は振り落とされそうになりながらも七海の絶妙なペース配分にぎりぎりついていくことができている。
そしていよいよ最後のステージまでやってきた。
「もうここまで来ちゃったね」
「あはは、人間意外とやればできるものだね〜!」
2人で頷き合って最後のステージに入った。
最後のステージはタイムアタックではなく丁寧に2人で協力して進めていく。
「ラスボスだね。こいつは確か乗り物奪ってぶつければいいんだったよね?」
「そうだよ〜!脳天にぶつければいいの!」
「あはは、言い方」
お互いに軽口を飛ばしながら敵にダメージを与える。
ゲームが得意でない和弘もこの国民的ゲームはかなりやっておりラスボスとの対戦は通用した。
そして──
「「やった!」」
ついにラスボスを倒して桃姫を助け出す。
2人はハイタッチした。
「やったね!数時間でいけちゃったよ!」
「そうだね。まさか本当に行けるとは……!」
和弘も珍しく少し興奮気味だ。
そんな和弘の様子に七海は優しげに微笑む。
「ど、どうしたの?」
「ううん。和弘が元気になってよかったな〜って」
「あ……」
確かに言われた通り心が軽くなった気がする。
やはり七海には敵わないなと苦笑するのだった。
「ふふ、和弘には笑っていてほしいもん。ね?」
そう言って七海はニコリと笑う。
その瞬間、和弘の心臓は大きく跳ねたのだった。
(あ……そうか。だから俺はいつも通りじゃ嫌だって思ったんだ……)
ずっと気づかなかった自分の中に秘められていた気持ち。
いつも一緒だからこそ本当の想いに気づけていなかったんだ。
俺は……七海のことが好きだ──
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