木と鉄と肉

みらいつりびと

第1話 木と鉄と肉

 木人は水に強く、火に弱かった。

 鉄人は火に強く、水に弱かった。

 肉人は火にも水にも弱かった。


 木人は肉人を軽蔑していた。

 肉人の国などは放っておいても滅びるだろう、と多くの木人が思っていた。


 鉄人は肉人を馬鹿にしていた。

 肉人の国なんてものの数ではない。いつでも滅ぼせる、とほとんどの鉄人が考えていた。


 木人国と鉄人国はしばしば争った。

 木人は水で攻撃し、鉄人は火で攻めた。

 たくさんの木人が焼け死に、無数の鉄人が溺れ死んだ。

 戦争は断続的につづいた。

 鉄人と戦うのが木人国の歴史であり、木人を殺すのが鉄人国の国是だった。


 肉人は放置されているうちに繁栄した。

 肉人には、木人と鉄人には知られていない長所があった。

 知能がすぐれていたのである。

 肉人国では文明が発達し、兵器が進歩した。


 火炎放射器が発明された。肉人はそれを使って木人国を侵略した。

 数え切れないほどの木人が殺戮され、木人国は降伏した。

 木人は肉人の奴隷となった。


 台風発生装置が開発された。肉人はそれを兵器として使用し、鉄人国に巨大台風を発生させた。

 洪水で星の数ほどの鉄人が溺死した。

 鉄人国は降伏し、鉄人はことごとく奴隷となった。


 肉人は全世界を支配した。

 木人と鉄人に働かせ、肉人は享楽に耽った。

 木人と鉄人を軽蔑し、馬鹿にし、差別した。


 あるとき、天上から鳥人が現れ、世界にくまなく爆弾を落とした。

 地獄の業火が地上で発生し、肉人はすべて死に絶えた。


 鉄人は生き残った。

 木人も根が残り、滅亡をまぬがれた。

 鉄人国と木人国は復興された。


 両国は平和協定を結んだ。かつてのような侵略は行われなくなった。

 鳥人は二度と現れることはなく、世界は穏やかに推移したという。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

木と鉄と肉 みらいつりびと @miraituribito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ