#4地下鉄

 ちゃんちゃらららん、ちゃんちゃららん、ブーンブーン


 スマートフォンの振動を感じた明海は、周りを気にしながら『着信拒否』のボタンを押す。ギョロっとした視線が彼女の方へ向き、1度軽く頭を下げた。


 電話をかけてきたのは皐戌メイだった。彼女は明海の友達で、同じ学科に通っている。


 「どうしたの?」と明海は皐戌にLINEを送る。


 「今日デートだったんでしょ?感想聞かせて欲しいなーって」


 「感想って言われても、よくわからないよ」


 「えー、じゃあどこまで進んだ?A、B、それともC?」


 「Aも、、、まだ」


 「じゃないんだから、、、」


 明海は自分を乗せている箱の揺れを感じながら、少し顔に熱がこもっていることに気付く。


 「そっちこそどうなの?」


 「私は高二の時にとっくにヴァージン捨ててるって笑」

 「キスくらい、彼氏に『寂しくなっちゃったの』っていいながら別れ際にすればできるでしょ」


 「でも私たちまだ手も繋いでないんだけど」


 「アハハ、ピュアだね。拗らせる前になんとかしなよ」


 「普通はどのくらいでするものなの?そこすごく参考になりそう」


 「手を繋ぐのは1回目、キスは2回目じゃない?」


 「やっぱりそうなんだねー」


 「キスしちゃったら大抵の男ならビンビンだから、そこからは一気にCよ!性器なんて使ってナンボでしょ!次のデートからヤっちゃいなよ、彼氏さん別のオンナのところいっちゃうわよ」


 明海はキャラクターがサムズアップしてるスタンプを送ると、スマートフォンを鞄にしまい真っ暗なトンネルを進む電車の窓を眺める。


 ときどき入ってくる光が彼女を飽きさせず、気付けば降りる駅についていた。


  改札の支払いをスイカで済まし、ピっという音とともに小さな扉が開き、そこを通る。普段であればNewDaysに寄りおにぎりを二つ買って家の方向へと向かうのだが、今日は吉野家で牛丼を買うことにした。


 踏切を渡り住宅街に入り、しばらくすると明海のアパートがある。鍵をがちゃりと開けて扉を開くとキッチンがあり、奥には冷蔵庫と洗濯機が置いてある。


 彼女はそれらを無視して、テーブルとソファのある部屋に入りテレビをつけた。ゴールデンタイムで人気のバラエティ番組のエンディングが終わり、テレビドラマが始まる前のコマーシャルが流れている。


 牛丼の容器の蓋を取り紅ショウガを二袋かけ、容器に口をつけながら割りばしでかけこむのが明海の食べ方だ。テイクアウトにするのもこれが理由で、店内で行儀よく食べるというのでは食べた気がしない。


 ドラマは最終回ということでオープニングはスキップされ、彼氏と喧嘩した主人公が友達に八つ当たりするところから始まる。


 主人公の女性が彼氏が今までしていた行いを知りそのことを咎めたことが喧嘩の要因で、その行いというものがかなり非道なものだった。いわゆる浮気というやつで、四股程度もしていたらしい。


 ドラマは彼氏が謝罪し主人公が盛大に振るというチャチいお話で、最後のカットのとき明海は興味を示さず牛丼の容器を台所で洗い捨てていた。


 容器を捨て終わるとシャワーを浴び、パジャマに着替えてベッドに横たわった。


 


 


 


 


 


 

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うずまき。 ニーソ男爵 @HentaiRanman

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