史上最悪の体育祭! ー これが生徒会の本気だ! ー【KAC20247 参加作品】

あら フォウ かもんべいべ

第1話 体育祭前








  これはあたしが高校一年生の時の話。


 東方共栄学園に入学したあたしは、ウィラと出会って仲良くなったある日のこと。


 学校の校則が突っ込みどころ満載だという話から始まり、ウィラは一年生ながら生徒会長に立候補すると言い、何故かあたしも巻き込まれて仕方なく書記に立候補する流れとなった。


 その後、ウィラは無事に当選し、同じくしてあたしも生徒会役員となったが、どういうわけか、書記ではなく書記長へと繰り上げとされてしまった。


 何故?……その疑問については、生徒会役員たちからこのように説明された。


『この中で一番統率力がありそうだったから』


『この生徒会長をなんとか出来そうなのは、香坂さんだけだと思うから』


『香坂さんに仕事を割り振るより、割り振ってもらったほうがよっぽどいい』


『この一年生、怖いでーす』……等々、理由としてはわからなくない。


 はっきりとものを言い過ぎるウィラとあたしだけあってか、生徒会長の補佐となれば、彼女を物理的に止められて、やや常識的(?)と判断されたのか、あたしがウィラのブレーキ役として期待されたらしい。


 そんなこんなでウィラとあたしは、学園内の問題を解決するべくして、奔走して時には大鉈を振るった。


 その結果、あるときの委員長会議の予算審議において、体育祭実行委員会から盛大に怨恨を買ってしまい、体育祭で決着をつけると言った、さながらプロレスの台本のような展開となったのだった───。







  さて、あくまでもあたしたち生徒会は、危険と思わしき競技の廃止を訴えたところ、体育祭実行委員会の反発を招いてしまった結果、話し合いにならなくなったために、予算を削減したことによって、開戦という流れになったのだ。


 生徒会長であるウィラを総帥とした『赤組』と、体育祭実行委員長を大将にした『白組』の二つの陣営は、体育祭前からバチバチと盤外戦でしのぎを削りあった。


 例え話になるが、流石にタイガー・ジート・シンによる、猪木襲撃みたいなことは起こらなかったけど、口喧嘩からあわや乱闘騒ぎの一歩手前まではあったため、体育祭の予行演習でバチバチだったのは言うまでもない。


 もちろん、危険な競技として争点になった騎馬戦の予行演習では、ウィラに突っ込めと言われるがままだったので、当然のようにボロ負けだったけれど、とりあえずはまともに動けるようになり、逃げ足も速くなったことからウィラはご満悦だった。


 もちろん、ウィラとあたしは露骨に手を抜き、本番前までは爪を隠していた。


 あえてボロ負けしておけば、相手は油断するだろうし、こちらの考えている手の内が読まれることもない。


 また、レギュレーション的にどこまで問題ないか、こちらも予行演習と事前の取り決めで確認済みなので、とにかく本番まで出来るだけ手を抜いて、こちらの戦力の温存を図らせてもらおう。


 作戦としては以下のとおり。


 体育祭当日はさ、好戦的な大将を装い囮になりつつ、頃合いをみて後退し、食い付いて来た奴らを引き付けつつ、逃げ足を鍛えた赤組の機動力を活かして回り込み、包囲殲滅を図るって流れだ。


 もちろん、ここに白組の大将が突っ込んでくる保証はないので、包囲に参加しないで温存させた戦力を密かに動かし、敵将にカミカゼアタックをする手筈になっている。


 もちろん、一騎だけでうまくいく保証はないし、護衛戦力がいることも鑑みて、最低でも三騎は運用したい。


 状況を見ながら突入してもらい、一騎目はぶつからずに目の前を横切り、行き足を止める役割をメインとし、また、護衛戦力がいた場合の誘引も担当してもらう。


 二騎目、三騎目が攻撃のメインであり、カミカゼアタックに等しい体当たりを行い、敵将を崩すって訳さ。


 もちろん、落馬しなくても相手の消耗は必須だ。


 騎馬戦までのプログラムも、なんとか白組の戦力を削る方法を考えながら、高校の体育祭で珍しいくす玉割りなんかは、きっと流れ弾が怖いだろうな?……ちょっと野球部とソフト部に協力してもらおう。


 綱引きは……体力の温存を図るため、全員で一斉に綱を話す算段を立てている。


 大玉転がしは、あらぬ方向、それこそ白組に突っ込んでもおかしくない。


 フォークダンス……変なおさわりをした瞬間、どうなるかはわかるよな?


 それから借り物競争だけど、赤組・白組のそれぞれが、お互いに借り物を書いて配布するらしく、相手からの妨害が予想される。


 赤組の方は、ドイツ生まれのクォーターであるウィラが、全部書いてくれる……もちろんドイツ語でね?


 念のため、ロシア語やフランス語も混ぜておくという徹底ぶりだ。


 こんな感じで体育祭の日も近くなったある時だ。


 いつもの三人で集まり、体育祭や運動会で使われる’色’の話題となった。


「ナギ、運動会や体育祭って、なんで赤と白なんや? 他の’色’やとあかんのか? ロシア内戦か?」


「さあ? 別に’色’なんて気にしたことなかったし、それだったら赤のあたしらの勝ちだな。崩壊するけど」


「ソ連かーい! あれや、薔薇戦争でいうたらうちらの勝ちやな。ほんならカズサちゃん、あんたならわかるんとちゃうか?」


「そうっすね、源平合戦が元ネタっすね。平家が赤で、源氏が白に分かれて戦ったのが由来っすね」


「カズサちゃん、それ言うたらな、うちら檀ノ浦に沈むやないかーい!」


 あたしらに割り振られた配’色’のゲンをどこから担ぐべきなのか、ソ連は論外として、ランカスター家にあやかるのも良いかもしれない。


 考えようによっては、戦わずして敗’色’濃厚になってしまうから、困ったものだね。


 とにかく、色の話題はこんなところで、体育祭当日まで入念に作戦を詰めていったのさ───。








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