第4話 史上最悪の体育祭 後編
◇
どうも、小幡っす。
体育祭の動画の編集も終わったんで、自宅謹慎で暇そうな会長、書記長とビデオ通話でもするっす。
ちゃんと反省してるか、わからないっすけど、とりあえず繋いでみるっすね……。
『……おっ、カズサちゃんや。こんばんは?』
『……よう、動画編集とやらは終わったのか?』
数コールもしないうちに繋がったっすけど、二人仲良く暇そうっすね……いや、そもそもなんで二人一緒にいるんっすかね?
「会長、書記長、どうもっす。ところで、自宅謹慎じゃなかったんっすか?」
『……それな、一人だと暇やし、ほんならナギの家に泊まっとった方がええやろ? ナギがおるし、おいしいご飯作ってくれるし、この世の天国みたいなもんやからな』
『……そういうことだ』
二人はいつも通りっすね、本当に仲が良すぎるっす。
会長を一人にするよりも、書記長と一緒の方がマシっすからね。
『……ナギ、これなかなかええアイデアとちゃうか? パソコンでな、ビデオ通話でやり取りしもって生徒会の仕事も出来るし』
『……ああ、確かに。これなら学校行かなくても問題ない』
「そうっすね、これだったら生徒会の仕事も滞らないっす。けど会長、書記長、あんたら自宅謹慎っすから、学校に来れないだけっすからね」
『……せやな、いつかパソコン使って授業する時代が来るんとちゃうか?』
『……ああ、きっとなんでもオンラインで出来てしまうんだろうな』
「そうかもしれないっすね。生徒会予算が多かった理由も理解できたっす。会長の先見の明っすね」
『……なかなかええアイデアやろ? パソコン部はんにな、めっちゃ協力してもろたから実現したんやで』
『……悪くないな。ま、おかげでさ……家なのにまったりも出来ねえぜ?』
「いや、まったりするのは勝手っすけど、会長と書記長……あんたら二人は謹慎中っすからね? なに二人で楽しそうにしてるんっすか?」
「『『HAHAHA!』』」
『……そらあれや、ナギの家、うちの向かいやし、そう変わらんやろ?』
「そうっすね、自宅謹慎の意味、全くないっすね」
『……小幡、意味ならあるぞ? 二人でやればさ、反省文の効率があがるぜ?』
「書記長、反省文に効率求めてないっすからね?」
「『『HAHAHA!』』」
『……そらそうなんやけど、カズサちゃん、うち、反省文初めてやから……ナギがおってめっちゃ助かったわ』
『……そいつはどうも。反省文もささっと終わらせた事だし、次はなんだ?』
「そうっすね、生徒会へのクレームはどうするっすか?」
『……そんなん言うてもな、しょーもないアホなイチャモンやったら時間の無駄やし、無視してもええで? そもそもやけど、体育祭実行委員会が、うちをナチ呼ばわりしたのがあかんやろ?』
『……そうそう、生徒会としては最初からさ、危険な競技だからやめろって反対していたからな? どうなっても知らねえし、騎馬戦で決着付けるって息巻いたのは、そもそもあいつらだろ?』
「まぁそうっすけど、会長と書記長がガチの戦にしたっすからね?」
『……あれな、釣り野伏せからの包囲殲滅がな、そらおもろいように決まったんやから、うちらの作戦勝ちやろ?』
「包囲殲滅の恐ろしさを垣間見たっす。あれ、ビデオで確認したっすけど……軍隊だったら教本通りっすね」
『……ま、実際に戦ったあたしらからすればさ、囮になって本気で戦って、頃合いを見て反転した結果、うまく釣られてくれたよな』
「そうっすね、あのときは必死だったっす。先頭の書記長が、相手に蹴り入れて崩したっすからね。マーシャルアーツ経験者で元ヤンの書記長を相手に、不意のぶつかり合いって怖いっすね」
「『『HAHAHA!』』」
『……うちもなかなか格好よかったんとちゃうか?』
「そうっすね、会長、横から組み付こうとして来た男子を投げてたっす……勢いを利用したっすね。相手は落馬判定っすけど、ハチマキはどうしたんっすか? そういう競技じゃないっすよね?」
『……ウィラもさ、合気道やってた事が活かされたようだな』
『……そらうち、めっちゃかわええからな、護身術ぐらいやっとかなあかんやろ?』
「過剰防衛にも程があるっす。会長と書記長で結構潰したっすからね。後でビデオで見たっすけど、六騎潰してるっすから、キルレートエグいっす。そこから突然、背を向けて逃げたら、相手は必死になって追って来たっすよ」
『……釣り野伏せの教科書通りだな。お前の指示通り、背を向けて後退してさ、機を見て反転したのを皮切りに、戦闘を避けて周りに散ってた奴らが、見事に伏兵となった。そこからは囲んで押し潰したって訳さ』
『……せやせや、騎馬戦はチーム戦やって証明したで』
「会長と書記長……発想が戦闘民族っすね? あ、さっき動画で確認したっすけど、包囲殲滅時に審判役の体育教師も巻き添えにしてたっすね? どうりで一人足りなかったっす」
「『『HAHAHA!』』」
『……あとは敵大将に三騎掛かりで突入、カミカゼアタックだ』
『……先方は体当たりと見せかけて、ただのフェイントや。相手の目の前を横切って、行き足を止めて釘付けや。そこで隙を見せた相手に次が体当たりするやろ? ほんで駄目押しの三騎目がトドメやったな』
「見事なチームワークだったっす。白組が可哀想だったっすね」
『……そう言えばさ、手鏡はどうしたんだ? お前が女子の身嗜みだからって押し通しただろ?』
『……あれな、目潰しに使えるんかと思ったんやけどな、そんなんやるんやったら集中運用せなあかんからな……せやから合図にしか使ってへんで?』
「たまにチカチカ光ってたっすけど、その為だったんすね。会長、ドイツ語の指示もフェイクだったんすか?」
『……せやで。ほんで直前にな、騎手たちにうちの手鏡が光ったら集合、囲めっていう合図やって伝えたんや』
『……おいおい、性格悪いばかりか、用心深いなおい?』
『……ナギ、ちゃうやろ? それいうたら用意周到といわんかい!?』
『「「HAHAHA!」」』
「ま、相手を文字通り殲滅したっすから、騎馬戦も前代未聞の一騎討ち無しで終わったっすからね」
『……ああ、戦ってさ、やっぱり速さに勝るものなんてないだろ?』
『……せやせや、騎馬戦言うからにはスピード勝負や。兵は神速を尊ぶんや』
「……いや、会長、書記長……そもそも騎馬戦って、競技なんっすけど? スポーツっすからね!? 誰が戦をしろって言ったんっすか!?」
『……そりゃあさ、怪我人も出るから戦だろ?』
『……せやで? うち最初からそう言っとるやん? うちら、なんも悪いことしてへんで?』
「いや、お前ら少しはスポーツマンシップに乗っ取れよ!」
「『『HAHAHA!』』」
『……ま、おかげで最後のリレーも勢いに乗れたな』
『……せやな、うちら赤組の劇的な逆転勝利やったな』
「そうっすね。白組だけ人数足りなくて200m走、マラソンみたいなリレーでしたっすね……会長、書記長、お前らいくらなんでもやり過ぎだろ!?」
『……ああ、おかげで体育祭終わった瞬間、表彰式は無しで即職員室だぜ?』
『……うちらなんも勝利の余韻なんて味わっておらへんで?』
「そうっすね、ええ、私と飯富さんも関係無いのに巻き添えっすよ?』
『……ああ、流石にそこは抗議したぜ?』
『……せやせや、なんも悪いことしてへんけど、カズサちゃんと飯富さんは関係あらへんしな』
「会長と書記長、いつも職員室でああなんっすね? 私らには出来ないっすよ」
『……小幡、理不尽な事を言われたらさ、言い返さなきゃ余計に面倒だぜ?』
『……せやで。ま、ちゃんと話せばわかってくれるかもしれへんやろ? 知らんけど』
「いや、会長、書記長、先生たちからしたらっすけど……あんたらが、話通じないから始末書と謹慎になったんだろうが!? 少しは反省しろよ!?」
「『『HAHAHA!』』」
こんな感じで二人とビデオ通話したっすけど、自宅謹慎を楽しんでいるようでしたっす。
体育祭の騎馬戦からの流れは、二人の証言と、動画の映像も一致したっすから、特に言うことはないっす。
二人がやり過ぎなのは確かっすけど、そもそも危険な競技でしたし、レギュレーションを違反していた訳でもなかったっす。
例えば殴るのは駄目って書いてあっても、蹴りは駄目って書いてないことが、ルール上の欠陥っすからね。
もちろん包囲殲滅、審判も巻き込むことについてもなんら明記されてなかったら、あの二人にとってルール上オッケイ扱いっすからね。
とりあえず、このあとイナ先生に報告するっすけど、この史上最悪な体育祭、二人にどういう裁定が下るんっすかね?
気になるっすけど、あとは野になれ、山になれっす───。
『史上最悪の体育祭』───cut!
◇
史上最悪の体育祭! ー これが生徒会の本気だ! ー【KAC20247 参加作品】 あらフォウかもんべいべ@IRIAM配信者 @around40came-on-babe
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます