第3話 史上最悪の体育祭 中編
◇
どうもっす、私、小幡 上総(オバタ カズサ)が前回に引き続き、動画編集の片手間に体育祭の出来事を語るっす。
───応援合戦。
赤組、白組の応援団による、メーンイベント前の余興っすね。
お互いのエール交換っすけど、とっても平和だったっす。
バチバチに揉めてた赤組と白組でしたっすけど、応援団だけは、スポーツマンシップに則っていたっす。
つかの間の平和っすね。
エール交換が終わったら、いよいよメーンイベントの騎馬戦っすね。
───騎馬戦。
ついにメーンイベントと言っても過言じゃない、伝統ある一番人気の騎馬戦っす。
今は一番人気なのか怪しいっすけど、その前にどうして、ここまで体育祭が荒れているのか?
私がその背景を説明するっす。
騎馬戦についてっすけど、生徒会としては危険な競技は全面的に反対の立場を取ったっす。
委員長会議でも生徒会の反対に殆どの委員会が同調したっす。
もちろん事前に、出来る限りで生徒達とヒアリングしてアンケート取ったんすよ?
その結果として、反対多数と言う事実は残ったっす。
次に教員側とも協議したっすけど、体育祭実行委員会同様、反対多数に関わらず覆らなかったっす。
多分謎の力が働いたっすね。
結果として会長は、委員長会議の予算審議会議で、体育祭実行委員会の予算削減して宣戦布告したっすね……本当、一部からの抗議がもの凄かったっすけど、会長と書記長はどこ吹く風だったっすね。
なんすか、その化け物みたいなメンタルは?
その後、収拾がつかなかったので、幾度となく体育祭実行委員会と話し合いを重ね、騎馬戦そのものは決行となったっす。
削った体育祭実行委員会の予算っすけど、生徒会予算から割り振る代わりに、生徒会から諸々の要求を通したっす。
いい落とし処じゃないっすかね?
……もしかして会長、最初からこれが狙いだったんじゃないっすか?
だとしたら性格悪いっすね、敵に回した体育祭実行委員会が可哀想になったっすよ。
一応、名目上来年度の騎馬戦存続 / 廃止を賭けた戦いってことになったっす。
プロレスの台本みたいっすね。
それから時が流れて、体育祭に向けた練習試合っすけど、会長率いる赤組に対する復讐心、対抗心なんっすかね?
体育祭実行委員会率いる白組、いきり立っていたっすよ……あ、練習試合は負けたっす、全敗っすね。
連戦連勝の実行委員会率いる白組っすけど、憂さ晴らしになったのか、溜飲が下がったかわからないっすけど、ご満悦だったっす。
せいぜい本戦もそうなればいいっすね……。
一方の会長と書記長、負けが込んでたのにも関わらず、めっちゃ悪い顔をしながら大笑いしてたっすね……そうっすね、赤組の動きはよくなってたっす。
逃げ足だけは早くなったっす。
ま、概ね会長の指示通りに動けたっすからね……けど、いくらゴリラの二人でも、屈強な運動部の男子相手に無謀な突撃かましてたっすから、当然負けるっすよ。
書記長(187cm)がゴリラで頼もしいのは良いっすけど、わりと高身長な先輩の飯富さん(169cm)と私(166cm)で何とか支えても、前後の等身合わないっすからね……書記長と会長が連携取れてるっすから、そのおかげでまともに動けるだけマシっすね。
そもそもっすけど、大将だからって会長(168cm)が上に乗るのはいいっすよ?
だけど会長、等身的にあんたは本来馬の方っすからね?
全く、とんだじゃじゃ馬っすよ。
それから連戦連敗のまま迎えた体育祭前日っすけど、会長が騎馬戦の赤組参加者を集めて、作戦を伝達したっす。
練習試合はまともに戦うように見せかけて、わざと負けてたらしいっす。
これで白組の油断を誘うのが狙いっすね。
次に練習試合で使用しなかった作戦っすけど、本戦では会長……前進して囮になるみたいっす。
大丈夫なんっすかね?
赤組のみんなの心配をよそに、会長は作戦を淡々と語ったっす。
何故か突然、ドイツ語講座が始まったっすけど、これは命令伝達で簡単な暗号化を図る意図があるっすね。
赤組のみんなは概ね理解したっす。
次に陣形っすね。
例えるならW型の布陣、鶴翼の陣っすね。
まず会長が囮として前面に出ます……いや、あんた大将っすよね?
大胆すぎる作戦、会長が何か考えているみたいっすけど、基本的に会長が全力で戦い、敵戦力を誘引。
頃合いになったら会長は後退して、展開した鶴翼が閉じて包囲殲滅っすね。
また、敵の大将は後方で高みの見物が予想されるっすから、伏兵を回り込ませて突撃するみたいっす。
騎馬戦だけに騎兵隊の出番っすね。
引き続き会長は敵大将の気を引く為、囮をやるっす……本当、大丈夫なんっすかね?
会長、明日は快晴だから確実に勝てるって、自信に満ちてたっす。
根拠はわからないっすけど、天気晴朗なれど波は高いっすよ?
そんな訳で体育祭当日、作戦開始っす。
これまでの競技でうまく敵戦力を削ったので、白組はそれなりに弱体化していましたっす。
練習の時より三騎少なく、白組大将の馬役が変更されてるっすね。
さ、まずは入場っすよ。
白組はなんというか、流行りの曲に乗せて入場したっす。
なんか普通っすね?
次は赤組の入場っす。
赤色だけに赤備えを意識してか、『風林火山』を入場曲にするなんて粋っすね。
なんだか武者震いがするっすよ。
その後、吹奏楽部による『扶桑歌(陸軍分列行進曲)』の演奏で高ぶったっす。
これ、誰がリクエストしたんっすか?
なんか思想強いっすけど……間に入る『抜刀隊』に合わせて、会長と書記長が大声で歌ってたっすね。
なんで完璧に歌えるんっすかね?…いや、リクエストしたのあんたらっすか!?
強者をリスペクトしながら上げて落とす歌っすから、会長と書記長、悪い顔でノリノリでしたよ、本当に。
白組煽りまくって、スポーツマンシップなんてクソッタレを地で行くみたいっすね。
それじゃ、私の出番はここまでっすかね?……動画の編集、アフレコ、疲れるっすよ。
会長と書記長、謹慎が明けたら、なんかご飯奢ってほしいっすね───。
◇
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