第3話 史上最悪の体育祭 中編







  どうもっす、私、小幡 上総(オバタ カズサ)が前回に引き続き、動画編集の片手間に体育祭の出来事を語るっす。



 ───応援合戦。



 赤組、白組の応援団による、メーンイベント前の余興っすね。


 お互いのエール交換っすけど、とっても平和だったっす。


 バチバチに揉めてた赤組と白組でしたっすけど、応援団だけは、スポーツマンシップに則っていたっす。


 つかの間の平和っすね。


 エール交換が終わったら、いよいよメーンイベントの騎馬戦っすね。



 ───騎馬戦。



 ついにメーンイベントと言っても過言じゃない、伝統ある一番人気の騎馬戦っす。


 今は一番人気なのか怪しいっすけど、その前にどうして、ここまで体育祭が荒れているのか?


 私がその背景を説明するっす。


 騎馬戦についてっすけど、生徒会としては危険な競技は全面的に反対の立場を取ったっす。


 委員長会議でも生徒会の反対に殆どの委員会が同調したっす。


 もちろん事前に、出来る限りで生徒達とヒアリングしてアンケート取ったんすよ?


 その結果として、反対多数と言う事実は残ったっす。


 次に教員側とも協議したっすけど、体育祭実行委員会同様、反対多数に関わらず覆らなかったっす。


 多分謎の力が働いたっすね。


 結果として会長は、委員長会議の予算審議会議で、体育祭実行委員会の予算削減して宣戦布告したっすね……本当、一部からの抗議がもの凄かったっすけど、会長と書記長はどこ吹く風だったっすね。


 なんすか、その化け物みたいなメンタルは?


 その後、収拾がつかなかったので、幾度となく体育祭実行委員会と話し合いを重ね、騎馬戦そのものは決行となったっす。


 削った体育祭実行委員会の予算っすけど、生徒会予算から割り振る代わりに、生徒会から諸々の要求を通したっす。


 いい落とし処じゃないっすかね?


 ……もしかして会長、最初からこれが狙いだったんじゃないっすか?


 だとしたら性格悪いっすね、敵に回した体育祭実行委員会が可哀想になったっすよ。


 一応、名目上来年度の騎馬戦存続 / 廃止を賭けた戦いってことになったっす。


 プロレスの台本みたいっすね。


 それから時が流れて、体育祭に向けた練習試合っすけど、会長率いる赤組に対する復讐心、対抗心なんっすかね?


 体育祭実行委員会率いる白組、いきり立っていたっすよ……あ、練習試合は負けたっす、全敗っすね。


 連戦連勝の実行委員会率いる白組っすけど、憂さ晴らしになったのか、溜飲が下がったかわからないっすけど、ご満悦だったっす。


 せいぜい本戦もそうなればいいっすね……。


 一方の会長と書記長、負けが込んでたのにも関わらず、めっちゃ悪い顔をしながら大笑いしてたっすね……そうっすね、赤組の動きはよくなってたっす。


 逃げ足だけは早くなったっす。


 ま、概ね会長の指示通りに動けたっすからね……けど、いくらゴリラの二人でも、屈強な運動部の男子相手に無謀な突撃かましてたっすから、当然負けるっすよ。


 書記長(187cm)がゴリラで頼もしいのは良いっすけど、わりと高身長な先輩の飯富さん(169cm)と私(166cm)で何とか支えても、前後の等身合わないっすからね……書記長と会長が連携取れてるっすから、そのおかげでまともに動けるだけマシっすね。


 そもそもっすけど、大将だからって会長(168cm)が上に乗るのはいいっすよ?


 だけど会長、等身的にあんたは本来馬の方っすからね?


 全く、とんだじゃじゃ馬っすよ。


 それから連戦連敗のまま迎えた体育祭前日っすけど、会長が騎馬戦の赤組参加者を集めて、作戦を伝達したっす。


 練習試合はまともに戦うように見せかけて、わざと負けてたらしいっす。


 これで白組の油断を誘うのが狙いっすね。


 次に練習試合で使用しなかった作戦っすけど、本戦では会長……前進して囮になるみたいっす。


 大丈夫なんっすかね?


 赤組のみんなの心配をよそに、会長は作戦を淡々と語ったっす。


 何故か突然、ドイツ語講座が始まったっすけど、これは命令伝達で簡単な暗号化を図る意図があるっすね。


 赤組のみんなは概ね理解したっす。


 次に陣形っすね。


 例えるならW型の布陣、鶴翼の陣っすね。


 まず会長が囮として前面に出ます……いや、あんた大将っすよね?


 大胆すぎる作戦、会長が何か考えているみたいっすけど、基本的に会長が全力で戦い、敵戦力を誘引。


 頃合いになったら会長は後退して、展開した鶴翼が閉じて包囲殲滅っすね。


 また、敵の大将は後方で高みの見物が予想されるっすから、伏兵を回り込ませて突撃するみたいっす。


 騎馬戦だけに騎兵隊の出番っすね。


 引き続き会長は敵大将の気を引く為、囮をやるっす……本当、大丈夫なんっすかね?


 会長、明日は快晴だから確実に勝てるって、自信に満ちてたっす。


 根拠はわからないっすけど、天気晴朗なれど波は高いっすよ?



 そんな訳で体育祭当日、作戦開始っす。


 これまでの競技でうまく敵戦力を削ったので、白組はそれなりに弱体化していましたっす。


 練習の時より三騎少なく、白組大将の馬役が変更されてるっすね。


 さ、まずは入場っすよ。


 白組はなんというか、流行りの曲に乗せて入場したっす。


 なんか普通っすね?


 次は赤組の入場っす。


 赤色だけに赤備えを意識してか、『風林火山』を入場曲にするなんて粋っすね。


 なんだか武者震いがするっすよ。


 その後、吹奏楽部による『扶桑歌(陸軍分列行進曲)』の演奏で高ぶったっす。


 これ、誰がリクエストしたんっすか?


 なんか思想強いっすけど……間に入る『抜刀隊』に合わせて、会長と書記長が大声で歌ってたっすね。


 なんで完璧に歌えるんっすかね?…いや、リクエストしたのあんたらっすか!?


 強者をリスペクトしながら上げて落とす歌っすから、会長と書記長、悪い顔でノリノリでしたよ、本当に。


 白組煽りまくって、スポーツマンシップなんてクソッタレを地で行くみたいっすね。


 それじゃ、私の出番はここまでっすかね?……動画の編集、アフレコ、疲れるっすよ。


 会長と書記長、謹慎が明けたら、なんかご飯奢ってほしいっすね───。









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