第2話 史上最悪の体育祭 前編
◇
どうもっす、小幡 上総(オバタ カズサ)っす。
生徒会と体育祭実行委員会が、体育祭前から当日までバチバチと火花を散らせてたっす。
なんとか無事、体育祭は開催出来たっすけど、当日は当日で色々あり過ぎたっすね。
結論から言うっすけど、騎馬戦で派手に暴れてやらかした会長(ウィラ)、書記長(ナギ)は、閉幕後に職員室へと連行されて、自宅謹慎になったっす。
今日は体育祭の動画を編集しながら、私が代わりに進行するっすよ。
早速っすけど、うちの体育祭の進行は以下の通りっす。
───開会式からの選手宣誓。
赤組代表の会長と、白組代表の体育祭実行委員長の宣誓っす。
会長、ドイツクォーターっすから、挙手を拒否していたっすからね。
「あんたらな、うちにナチス式敬礼やらせるんか?」って、揉めたんっすよ。
これには会場でどよめきが挙がったっすね。
このままじゃラチが明かないっすから、会長は人差し指を突き上げるドイツ式で、選手宣誓をやる事にしたっすから、何とか事なきを得たっす。
それから体育祭実行委員長と歩調を合わせて、宣誓を交わすんっすけど、会長……なんでドイツ語なんっすか?
わかっていたっすけど、歩調合わせる気ゼロだったっすね。
会長が何言ってるかわからなかったっすよ?
体育祭実行委員長と先生たち、めっちゃ動揺してたっすね。
ついでとばかりに体育祭実行委員長をドイツ語で罵倒してたっす……なんとか無事に選手宣誓は終わったっすけど、スポーツマンシップってなんっすかね?
とりあえず会長の宣誓部分、全部『ピー』音にしとくっす。
最早モールス信号みたいっすけど、とにかく波乱の幕開けっすね。
───くす玉割り。
うち、高校なんっすけどね?
珍しいっていうのか、童心を忘れず生徒一同が協力し、一体感と達成感を分かち合うオープニングセレモニーっすね。
素晴らしいっすね。
私たち、赤組も童心に帰って楽しんだっすけど、どさくさに紛れて書記長……白組の主力メンバーに向かって全力投球してたっす……。
同じ赤組の野球部やソフト部も書記長に倣って、隙を見て投げ込んでたっす……本来の目的忘れてたっすよ、あれ。
途中で白組も気付いて投げ返して来たっすけど、そうしているうちに乱闘騒ぎになりかけたっす。
流石に一旦競技を中断して、落ち着いてから再開したっす。
赤組は負けたっす、残念ながら当然っすね。
とりあえず、体育祭実行委員会の予算をカットする代わりに、保健委員会への予算増やして正解っすね。
───徒競走。
赤組が勝ったっす。
くす玉割りで白組の戦力を低下させたっすからね。
あ、その次の綱引きは負けたっす。
相撲部が白組に固まるって反則っすよ?
会長と書記長、露骨に手を抜いてたっすから、史上最短時間を記録したっす。
始まった瞬間、全員で綱離したっすから、白組の圧勝っすけど、保健委員会が大活躍っす。
もちろん先生にめっちゃ怒られてたっすけど、会長と書記長はどこ吹く風と気にしてなかったっす。
むしろRTAだったっすね。
とりあえず、総合優勝すれば問題ないっすから、綱引きは露骨な捨て試合だったっすね。
───フォークダンス。
敵対関係を一旦忘れて休戦っすね。
和気あいあいと両チーム入り交じって踊ったっす。
でもあれっすね、会長と書記長、絶対にわざと強く握ったり、投げたり、足払いかけてたっすよ……変なとこ触られたんっすかね?
あのゴリラ二人でまた中断っすよ?
とりあえず物言いが終わらないので、ビデオ判定した結果っすけど、赤組の正当防衛が成立したっす。
来年度からフォークダンス、廃止かもしれないっすね?
───幕間。
合間合間っすけど、運動部の演舞、活動報告やデモストレーションもあったっす。
体育祭を上手く発信の場にしてるっすね。
会長、書記長、ナイスアイデアっす。
───大玉転がし。
これまでの流れからっすけど、嫌な予感がしたっす。
「Achtung!(注目!) Alles gut leute!(いいかお前ら!) Das ist krieg!(これは戦争だ!) Ich werde mein bestes geben!(徹底的にやるぞ!)」
競技開始前、会長がドイツ語で発破をかけてきました。
これなら白組もわからないっすね。
会長が前日に意味を教えてくれたんでわかってたっすけど、赤組のみんなを鼓舞したおかげか、大盛り上がりっすよ……本当、体育祭をなんだと思っているんですかね?
あ、ここから会長の喋っているところ、全部『ピー』音っすね。
ついでに書記長も『ピー』音で自主規制っす。
なんというか、会長と書記長、マジで体育祭実行委員のこと、嫌ってるっすね。
それで大玉の行方はどうなったかって?……hahaha、聞かない方がいいっすよ?
あ、当然っすけど、赤組は負けたっす。
また保健委員会の出番っすね、トリを飾る騎馬戦に向けた前哨戦っす。
白組……そろそろ本気で白旗を上げたほうがいいっすよ?
───借り物競争。
あ、騎馬戦の前に借り物っすね。
白組、赤組がお互いにカード書いたっすけど………会長、性格悪すぎっすよ?
ほぼ全部ドイツ語っすからね?
ロシア語、フランス語、スペイン語も混ぜてたっすけど、競技として成立してなかったっすよ。
そう言えば会長、裏地 伶仁(ウラジ レイニン)学年主任のヅラをかっさらって全力疾走してたっす。
最高のムービー撮れたっすよ、会長やっぱ笑いの神に愛されてるっすね。
そんな訳で会長にかかれば、白組の意地悪なんかもどこ吹く風っすね。
あ、書記長はお胸のチョモランマが、ネットに引っ掛かって大変そうだったっす。
面倒くさいからって、ネット引きちぎった化け物だったっす……怖いっす。
因みに書記長の借り物、財布だったらしいっすよ……書記長にそれやらせたら、ただのカツアゲにしか見えないっすね?
借りるまでが大変だったみたいっす。
なんだかんだで赤組が勝ったっす。
来年からはそうっすね、わかる日本語で書いてくださいってなるっすね。
間違いないっす。
ここまでの途中経過っすけど、白組が一歩リードっす。
赤組2勝 / 白組3勝
騎馬戦で赤組が勝てば並ぶっす。
そうすればリレーで延長戦、決着っす。
逆は単なる消化試合っすから、そうなったらまた露骨に手を抜くんじゃないっすかね?
そんな訳っすから、騎馬戦は実質天王山っす───。
◇
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