七光戦隊レイワノモージャー

スロ男(SSSS.SLOTMAN)

第1話 登場! レイワノモージャー!

 学校が混乱に陥っているのは、悪の組織が体育館で暴れ始めたからだった。どういう規模の組織でどういう意図があって小学校の体育館に現れたのか、それは定かではない。

 逃げ惑う子供も、悲鳴を上げながらどこかアトラクションを楽しんでいるような気配さえ滲ませている。中には本気で泣きそうな子もいるが、阿鼻叫喚というよりかは黄色い悲鳴といった趣きがあった。

「その子の手を離せ、怪人!」

 声とほぼ同時に壇上に立つ怪人の手に何かがぶつかり、その衝撃で解き放たれた子供がキャーキャー言いながら逃げた。

「なにやつ⁉︎」

 怪人は声の方へ顔を向けた。

 キャットウォークに立つ、赤い人影が「とう!」といって飛び降りる。くるくる回りながら。そして見事に着地を決める!

 どこから現れたのか、似たようなコスチュームを着た面々が、めいめいポーズを取って横並びになっていた。

 追う戦闘員も、追われる小学生も、ぽかんとした顔で彼等を見た。

 赤いコスチュームの人物が名乗りを上げる。

「とにかく金のため! ギインレッド!」

 次いで右横の緑が、

「平和のためなら平穏なぞいらぬ! ピースグリーン!」

 今度は左横の黄色、

「笑わせたいが笑われるのは耐えられん! ゲーニンイエロー!」

 最右翼のマゼンダ色が、

「使われるより使う側! サンギョーピンク!」

 左端の最後の水色が、

「なんでここにいるのか僕もわからないッ! コイホカシアン!」

 どかーん、と各色の爆炎が背後であがり、巻き込まれた教師や生徒が涙目で咳き込んだ。

「お、おまえらは——!」

 怪人が嘯く。

「おまえらは……誰?」

『我々は七光シチコウ戦隊 レイワノモージャーだ!』

 ビシッと決めポーズ。再びのカラフルな爆炎。今度こそ阿鼻叫喚の図だった。

「や……やるな。一般市民はもう青息吐息だ……」

「おまえこそ名を名乗れ、怪人!」

「人様に名乗るほどの者じゃあござんせんが『必要悪』たあ、あっしのことでぃ!」

「む、なんかわからないが圧を感じる。キャラが行方不明だが!」

「世界征服だあ、人類滅亡だあ、そういった大望は抱かず、地方で人々にちょっとした刺激と生の大切さを知ってもらうばかりのチンケな悪党でさァ。ところであんたら七光なのに、五人なんですかい?」

「七人の光だから七光ではないが、終盤ではドクターホワイトとサンギョーブラックが加勢することになってる! クラスのみんなには内緒だよ!」

「内緒のテンションじゃねえ! くそう、おまえら、たたんじまえ!」

 呆然としていた戦闘員たちが、弾かれたように動き出し、戦隊へと襲いかかる。

 だが所詮社畜的存在の戦闘員には、敵う術もなく、あっという間に伸されてしまった。子供たちが突然の活劇に、咳き込み、咽せながら拍手する。

「くそう、こうなったらあっしが直々に——」

 必要悪の体がぶるぶると震えたかと思うと、ミシミシと音を立てながらゆっくりと膨張し始めた。

「まさか巨大化⁉︎」と紅一点のサンギョーピンク。

「まずいぞ、レッド!」とピースグリーン。「デザイナーが全員トイレ作りにかかりきりなせいで巨大メカのデザインが終わっていない!」

「ぐぬぬ」とギインレッド。「こうなったらマザームーンの力を借りるしかないのか」

 ヒッと悲鳴をあげる、コイホカシアン。「でも、あれは乗るたびパイロットが死んでいくから!」

「それは漫画が違……いや、待て、怪人が!」

 ついには天井を突き破るほどに巨大化した必要悪は、崩壊した天井に埋もれて動かなくなった。

 天使が通った。

『正義は勝つ!』

 全員ポーズを決め、爆発!


 こうしてささちょうに平和は訪れた。だが第二、第三の悪がこの町を狙っている。てレイワノモージャー、打ち破れレイワノモージャー!




ヒーロー紹介……


ギインレッド:中共の徒とも、宗教の徒ともいわれる議員の二世。現在は父親の元で秘書をやっている。どうでもいいからマザームーンとは手を切れ。


ピースグリーン:最近シーシェパードに移ろうかと考える二世。正しくない相手は殴ってでもわからせないと、というあたりで周りから顰蹙を買っている。


ゲーニンイエロー:売れない芸人の親の元で苦労した二世。なのに何故か同じ道へ。いじられても「おいしい」と思えずキレる。キレのないキレ芸では誰も笑わない。先輩芸人から飲み会のセッティングを任されると女狼メローイエローと化す。


サンギョーピンク:置屋の娘。親に反発し、家出。いまはトー横界隈の女性を使って自力で稼いでいる。本人はピンクとのたまうが実際にはマゼンダ色。


コイホカシアン:何故この戦隊にいるか当人のみならず周りも誰もわからない。普通の家庭に育ち、恋に恋するピュアボーイ。愛読書は『水色時代』。


カギリナクトウメイニチカイブルー:(除籍)福生の辺りで葉っぱを吸ったり鳥が見えるとかいったりするネイチャー志向。女性のデリケートな部分に勝手にバターを塗ろうとして足蹴にされ頸椎損傷。日常生活は問題ないが戦隊からは抜けた。シアンの前任者。


ドクターホワイト:町医者の二代目。かろうじて滑り込んだ歯科大学で学び、現在開業中。Ph.Dは持っていない。3クール目から登場し、終盤にて正式加入する。


サンギョーブラック:実は黒幕。秘密組織暗灰色社会を影で操り、七光戦隊をスターダムに押し上げようと画策。普段は恵比寿顔だが、怒ると鬼の形相。友達からは鬼の平ちゃんなどと呼ばれている。



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