敏腕エージェントの日常7
信仙夜祭
今日は、戦争の回避か~
俺こと敏腕エージェントは、今、新しい任務のために移動中だった。
まあ、なんだ……。別なパスポートを得て、また敵国に潜入するのだ。
顔は変えられないが、髪型と髪の色を変えたので、すぐにはバレないだろう。
以前の街とは、大分離れた街を拠点にするつもりだし。
「あなた……。次の仕事は決まっているのですか?」
以前の任務で救った、元お姫様。今は妻として同行して貰っている。
下級エージェントの資格を得て、今は俺の片腕だな。
しかし……、仕事か~。
「もう一度、暗号文を読んでくれ」
妻が、暗号文のかかれた新聞を取り出した。
『敏腕エージェント、国王に君の妻のことがバレてしまった。今は影武者がお姫様を演じているが、戻す気がないのであれば、病死にするそうだ。君はしばらくの間、敵国で身を潜めて欲しい。国王の方は、組織の方で説得してみる。元お姫様に危険が及ばないように……な』
ため息しか出ないよ。まあ、手を出しちゃったしね。
ちなみに子供はできていませんでした。
しかし、また潜入任務か~。少し休みたいのもある。
「それでどうするのですか?」
「暫くは、ホテル暮らしをして、住処と仕事を探そうか……」
「本当に行き当たりばったりなのですね……」
エージェントの仕事なんてこんなもんよ?
◇
ホテルについたら、組織から通信が入った。
妻が読んでくれる。
『敏腕エージェント、困ったことになった。国王が、王族護衛軍を出兵させるそうだ。それほど末子の奪還を優先するみたいだ。そして、それを口実に戦端を開くみたいだ。頼む、戦争を回避してくれ』
「これって、どんな指令ですか? 内容がないのですが」
アバウトだよね。『戦争の回避』って……。
「どうする? 王城に戻るか?」
……その、オーラ全開の怒気を止めよう。
「王族護衛軍……。通称
「擬装用の死体でも用意しますか?」
それで納得してくれればいいんだけどね。まあ、無理だろうな~。
次の日、国境でのにらみ合いが始まった。
敵国としては、訳が分からないだろう。良く分からない人物の引き渡し要求……。まあ、口実だよね。
両国が戦争をしたがっているのは、明白だ。
その回避のために、俺が動いていたのだけど、結果、活躍し過ぎて火種を作ってしまうとは……。だが、あの時お姫様を救わなければ、戦端が開かれていただろう。
遅かれ早かれなのかもしれない。両国の首脳陣が、戦争をしたがっているのかな?
「どうなされるのですか?」
「赤の軍に向かおう。知り合いがいるはずだ」
結局のところ、俺たちは投降した。
戦争を起こされるよりは、ましだとの判断だ。
「久しぶりだね。敏腕エージェント」
「皇太子様もお元気そうで、なによりです」
「お兄様……」
もうね……、この人しか頼れないのよ。昔、任務で護衛をしたことがあったので、ちょっとだけ繋がりがあった。
「ふう~。これで君は、義理の弟か……」
俺の方が、年上なんだけど?
まあ、細かいことはどうでもいい。
「お兄様? わたくしは、お城には戻りませんよ?」
「ああ、分かっているよ。それと、軍を撤収させようか」
良かった。戦争は回避された。
後は、俺たちの処遇だな……。
◇
「結局は、スパイの洗い出しだったと?」
事の顛末を聞いた。
「色々な所に
今回はなにもしていないけど、また活躍していたようだ。
しかし、敵国のエージェントは質が悪いな。
「それと君たちの処遇だけど……。諜報活動を中止して、王族護衛軍に所属して貰う。ちょっとね、王族の中でも揉めててね。力を貸して貰いたいと思う」
俺に拒否権はないけど、これからは内政に関わるのか~。政敵とか嫌だな~。
◇
こうして、今日もこの国の平和が護られた。
敏腕エージェントの活躍は、終わらない。つうか、今回はなにもしなかった。
終わりが見えない戦いは、今後も続いて行く――かもしれない。
敏腕エージェントの日常7 信仙夜祭 @tomi1070
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます