第4話 14時

―――


 病院での私の仕事は、昏睡状態になった患者のカルテをひたすら見るだけの単調な仕事だった。


 長椅子に座り、うとうとしているところに、昏迷状態の急患だと言われて呼ばれたのは、寝耳に水だった。


 なんでも、交通事故らしい。


 昏迷状態とは激しい物理的な刺激によってなる状態で、昏睡状態とは違い。まだ治る余地はあるのだが、私は処置なし。と、全て機械に任せた。


 その患者が妻だと知ったのは、だいぶ後になってからだ。


 その後、植物状態となった妻は3年も経っても、理解力や意思疎通ができる脳の三パーセントも回復せずに、食べ物を多く欲求したり、仕事へ行こうとしたりといった行動だけをとった。


 今思えば、植物状態となった大半の患者が6カ月以内に死亡する割合を見ると、奇跡だったのだろう。何故なら残りの患者は何年か生きていることができるのだから。


 だが、ある日。


 院内で看護婦や同僚たちが、いつの間にか一人ずつ消えていってしまっていた……。

 

 きっと、妻がお腹を空かしているからだろう……。

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とある男の手記 主道 学 @etoo

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