第3話

――――


 ???時。


 その後の記憶には、通勤途中に私が運転している自動車に突然。後方から強い衝撃が起きて、そのまま車体ごと電信柱に激突したことがあったことだけが残っている。


 それから、私は恐らく病院へ搬送されたはずだし。


 ここは、確かにあの病院のはずだ。


 あの病院とは、朝から何者かが走り回る足音がすると、近所で苦情や良からぬ噂が広まっていた。それに、決まって夜になると何かの肉片が窓からぼとぼとと落ちてくるのだそうだ。その病院は、私の家のすぐ傍にある。それも今では廃病院擦れ擦れとなっているはずの親戚が経営していた建物だ。


 私の容態にもよるが、事故を起こした場所の近くの病院はそこしかないからだ。いつの間にか、医者や看護婦たちが行方不明になる病院。


 妻も三年前は私と一緒に朝食を食べないのだが、昼も夜も仕事が特に忙しい時は、まったく食べない日もある。風の噂で妻が他界したと聞いた時は、ちょうど妻の仕事が繁忙期での出勤時間だった。


 生前は人一倍生真面目な妻は、今もどうにかして仕事へと行こうとしているのだろう。


 それも、夜遅くまで。


 それにしても、亡くなったはずの妻は夜は何を食べているのだろう?

 それと、今気がついたのだが、この部屋。いや、空間には機械の駆動音が微かにするんだ。


「お腹空いてる? 私は空いてるわ……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る