第2話
「お腹空いてる?」
できるだけ刺激しない方がいいかな。
私はうんうんと首を何度も縦に振って、無理に相槌を打った。
「ああ、そうだよ。お腹空いてるよ」
そう、私は優しく言った。
そう優しく言いながら、頭の片隅で考える。
一体ここはどこだろう?
それも必死に考える。
あ、そうか……。
ここは……。
一つだけ思い当たるところがあった。
だが、私の記憶はまだどこかが抜けているようだ。
――――
月曜日の早朝 7時。
私はベッドから起き上がると、すがすがしい朝日を全身に浴びるためにカーテンを開けた。
「ふぅ」
疲れたな……。
昨日は残業だった。
仕事は朝の9時から深夜の4時までだった。
「あ、そうだ」
朝食はいつも摂らない。
代わりにホッㇳココアを飲むことにしている。
妻は三年前。
玄関先で喧嘩別れした後に、目と鼻の先で交通事故を起こして他界してしまった。
何故、あの時。
喧嘩なんかしたのだろうと、今でも気に病んでいた。
こんな30過ぎの男にいい寄って来る女性は、院内には一人もいなかった。
さて、身支度は終わった。
いつもの通勤時間だ。
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